小説『ラグナロクゼロ(シーズン1〜2)』
作者:デニス()

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(いまの……)

 カーテンが閉めてあって誰なのかは特定はできなかったが、聞き覚えがある声だったので耳をすます。

「だ、ダメだよ友ちゃん」

「いやよ岬。一ヶ月後って約束でしょ」

隣から聞こえてきたそのささやき声の主は、友近とその幼なじみの石川だった。

 (な! 石川さんと吉柳院さん。どうして……!)

「そうだけど、なにも今ここですることないじゃん! それに先生来ちゃうと思うし……」

カーテンが閉められているとはいえ、隣のベッドでは窓から射す太陽の光によって、上から順に友近と石川が互いに身を重ね合う二人の姿がかすかに見え、真堂は寝たふりをしながら混乱する。ちなみにカーテン越しに写しだされたシルエットには、友近のポニーテールが見えたので上だとわかった。

「それは心配ないわ。先生には買い物を頼でいるから、大抵30分は戻ってこなくてよ」

(保健室先生をパシリに使ったんだ……)

今の真堂はまるで『蛇に睨まれたカエル』ように動けず、口から出そうなセリフは心の中で叫び、冷や汗をかきながら二人の様子を伺った。

「それならいいけど……」

(いいんかい! つうかなんでいきなり『私達越えては行けない一線越えちゃいました』みたいな状況になっている訳! おかげで立ち去ろうにも全然去れねえじゃん!)

更に混乱する真堂が隣にいるのにも関わらず、二人だけの『秘め事』をしようと、友近は今まさに互いに感じ合うきっかけを作ろうとしていた。

 「そう……ではまず最初に―――」

 「ん……!」

 石川の了解を得たことで友近はすぐに行動に移った。まず最初に友近は石川に口づけをして、少し長めではあるが、互いの口内に舌を絡ませ、そのことである部位に間接的な刺激を与え会っていた。

 (まさかこれは……『百合』というものでは……)

 一方真堂は少ない視覚情報とはいえど、隣にいる二人の関係がかなり親密である事を知り、よけいに冷や汗をかく。

「フフ……」

「―――ひゃう……!」

 手慣れた様子で次に友近は不敵な笑みを石川に見せながら、彼女の首筋に少し浮いている血管を下から舐め上げるようになぞり、そのまま片方の耳に到達すると、舌を引っ込ませて耳たぶをくわえる。

「ああ……でも―――」

「なに?」

「隣に……李玖くんいるし……、まずいんじゃない?」

(あれ、やっと俺登場?)

友近が石川の耳の穴に舌を潜り込ませようとした直前、攻められている彼女がためらうように、隣にいる真堂の事を気にかける。

「フンッ。あんな下郎が若の豪速球を受けて、そんな早く目覚める訳なくってよ。下郎は下郎らしくもうちょっと長く伸びていればいいのですわ」

(あんにゃろう……)

完全に真堂の事を低い身分で見ている友近。彼自信はその上から目線の発言を聞いて、イラだちを覚える。

「『下郎』はともかく、「いつまでも伸びていればいい」は言いすぎなんじゃ」

(俺が『下郎』と呼ばれるのは例外じゃないんですか……)

『天然』といってもおかしくない石川のどこか抜けているフォローに、重ねてイラだった真堂は、心の中で疑問とツッコミを込めた言葉を叫ぶ。

「もう……、そんな話はいいでしょ。早く続きをしましょうよ」

焦らされるようで躍起になり始めた友近は、石川に対しての『攻め』のハードルを上げた。それと同時に顔を石川の胸元に近づけて、彼女の独特の体臭を嗅ぎ、さらに興奮を高ぶらせる。

「い……あっ、ダメ! 体育の後だから……」

「ウフフ……、汗臭いあなたも素敵ですわよ」

「も〜……」

一見悪口のように聞こえるが、友近の発言に石川は誉め言葉として受け取り、自分より身分が上の幼なじみの頭を優しく撫でる。

(早く終んねえかな……)

隣でイチャイチャしている二人の行動は、自ら場違いな状況に立たされている真堂にとって、興奮すると同時に快楽を感じるとは裏腹に、まるで針山で正座をさせられているかのように、精神的な打撃を受けていた。

「はあ〜……、岬……本当にありがとう」

「うん……」

(?)

友近は涙ぐみながら、このような親密な関係を石川が続けていてくれていることに感謝の言葉を口にする。それを聞いた真堂は不思議に思い、今隣でやっていることは『何か複雑な理由があるのではないか?』という、引っ掛かりを感じた。

「友ちゃんそろそろ……」

「そうね、じゃあ―――」

(ヤバイ……!)

カーテンの向こう。いつの間にか二人はさらに興奮を高ぶらせ、石川は今にして互いのに持つ『思い』が、相対的に衝突する準備ができたことを友近に伝える。そのことで、とても大きな精神的打撃が来ることを悟った真堂は、顔を青ざめさせながらまぶたを閉じ、どうしても防ぎようがなかった為に、ベッドに寝た降りをしている少年は覚悟を決めた。
二人は同時に口づけをし合うことで、互いの感情に火を点けた。男女の交わりのように一つになることは叶わずとも、荒い呼吸の中で、同性の二人はまるで抗うかの如く、あらゆる手と足といった部位を絡ませ、互いの肉体的に溜まっている鬱憤を解消し合った。
そして隣にいた真堂は―――

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