小説『ラグナロクゼロ(シーズン1〜2)』
作者:デニス()

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現在、『ミセリコルディア財団』は、2年前に『アヴァロン』という『ある重要な物』と『EUの覇権』を巡って権力闘争を背景にした内戦(教団も含む)が起きていた。それは組織内だけでは収まらず、『EU』の政界及び主要国・イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ベルギーといった合計6ヵ国をも巻き込み、特にベルギーを主戦場として、長期にわたり争っていた。
 今の現状からして勢力は二つに分けられる―――今ホリーがいる勢力は、イギリス王室と軍府の有力な名家であるナイトロード家当主・『アレス・G=ナイトロード』を中心とした『アヴァロン穏健派』。相手の勢力は、欧州警察機構(ユーロ・ポール)の重鎮・『ラインズ・フィル=グラスワード』を中心とし、教団側では枢機卿の位で、イタリアの有力な軍需企業アルマ社社長・『レオニード=マクスウェル』を入れた『アヴァロン独占派』。以上の二つの勢力が衝突しているが、長期に続いているとはいえ、未だに自然的な均衡が保たれている。

 「ホリー様……―――」

「たのもー!」

ホリー言葉にジャスティンは、愛でるように彼女を見つめるが、途中大聖堂の入り口前に、まるで道場破りが来たかのような大きな声が二人の耳に入った。

「なにごとですか!」

罵声を浴びせられたみたいにホリーは激怒した。

「イヤーハッハッハッ! 申し訳ないミス・ホリー。一度でいいからやってみたかったのですよ」

大聖堂に響きわたるくらいの甲高い笑い声とともに、爽快な笑顔を見せる二メートルの背丈をした大男が入ってきた。

「マクベス神父!」

 冷や汗をかいた状態で驚くジャスティン。

「ハッハッハッハッ! お久しゅうございますお二方! 『フランク騎士団』二代目団長・マクベス=アームフェルトここに参上いたしました!」

神父服に浮き上がっている引き締まった胸筋を張り上げながら、マクベスは二人が若干ドン引きするくらいの爽快な自己紹介をした。

「静かにしなさい。騒々しい! ここは一応神聖な所なのですよ!」

 聖堂の中で騒ぐのはご法度だった為、ホリーは母親のようにマクベスを叱りつける。

「ハッハッハッ! いやいや重ねて申し訳ない!」

 財団の中ではかなりの異端児だと知られているマクベス。彼はジャスティンと同じく『パラディン』なのだが、それとは少し異質で独立した集団を保有している。それは『パラディン』の総数(1万人)およそ十分の一を割いて形成された集団・『フランク騎士団』。この組織は類い希な戦闘能力と、混血・移民・元傭兵といった独特の組織構成でまとめられ、その歴史は『EU』創設初期の頃、1958年ローマ条約発効と同時に、『欧州統一の象徴』という立前で、財団が結成させた『EU政府』直轄の異端討伐兼護衛を目的とした組織である。初代騎士団長・カール=ヴィクセンが健在の頃は名高い組織だったが、マクベスが二代目に就任してから、自由奔放な行動が多発し始めたことで、騎士団自体の名誉が低迷及び完全な孤立した組織となり、いわゆる『ならず者の集団』として見られるようになった。その為、内戦状態でもどの勢力にも入らず、今は中立の立場となっている。

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