小説『ラグナロクゼロ(シーズン1〜2)』
作者:デニス()

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 「『異端神父』と言われているあなたが、一体なんのようですか……」

 苦手で嫌っているマクベス対して、ある一つの二つ名を口にしながら問うた。

 「ハッハッハッ! 懐かしい響きですな!」

 組織内で嫌われているマクベスは、よく幾つかの異名が付けられている。『豪腕神父』、『異端神父』、『眠れる巨人』、『エゴイスト・マクベス』、『ファシスト・マクベス』といった数々の異名があり、ともに皮肉と悪口が込められているが、本人はまったく気にしてはなかった。

「それに『中立』の立場であるあなたが、ここにいるのはまずいのではないのですか? ただでさえ『目の敵』にされているのに」

「ハッハッハッ! いやいやそれは「人聞きの悪い」というものですよ、ミスター・ジャスティン。我輩はただ善良に職務を真っ当しにきただけです」

ジャスティンに注意をされたマクベスだが、それとは別に自ら滅多にでないセリフを口にする。

「職務……ですって? 一体なにを―――」

他に返す言葉がなかったホリーはすぐに要件を問う。

「ミス・ホリーは『ハープメイ』をご存知ですかな?」

「21世紀初頭に東欧を騒がせていた『中級の契約者』のことですよね?」

『契約者』というある隠語を口にして、ホリーは返答する。

「ハッハッハッ! さすが教皇様。4年前、日本人でただ一人のパラディン・『結城正道』が、自らを犠牲にして倒した『契約者』です」

「確かに……、ですが今頃になってなぜその話を?」

妙に主人公の人生を一変させたあの事件と、まるで因果を巡らせるようなこの話に、知らずにホリーはマクベスに問う。

「いえですね、『総本山直轄の観測班』から、倒されたはずの『ハープメイ』のアルコン反応が出たのですよ」

「!×2」

マクベスの告げたことに二人は驚き、その『ハープメイ』という『契約者』の驚異を理解させる。

「一体どこに!」

話を急かすホリーはマクベス問いかける。

「日本の神奈川という所です」

「神奈川……、かつて『結城正道』の管轄だった教会があったはずでは! まさか復讐……」

場所の特定をしたこと告げた後に、『ハープメイ』が神奈川にいるのに心当たりがあったジャスティンは、マクベスに推測を述べる。

「いいえ。我輩の推測だと……おそらくポーランドで起こした『間接的大量虐殺』を、また日本でやる気でしょう」
マクベスの推測を聞いて、二人は顔を青ざめたと同時に恐怖を感じさせた。

「それ……は、なりません! 絶対にあんなムゴイ惨劇を繰り返しては!」

 その時ホリーの脳裏に、親指を加えてうずくまる大量の餓死した人間の写真がよぎった。その写真は、かつて『ハープメイ』が起こしたことで、ホリーはいずれ新たな驚異となるのを悟り、次の惨劇を止めたい気持ちをマクベスにぶつける。

「そこでミス・ホリー。この紙にサインを―――」

「は? これは?」

 マクベスはホリーにある一枚の紙を手渡す。

「『東方遠征』の申請書です。日本はEU圏外ですので、複数の『パラディン』が国外で正式に契約者の『討伐』を行うには、財団最高幹部全員の許可のサインがいるのはご存知でしょ?」

「日本に行くのですか! それは我々『イギリス聖堂支局』の仕事のはずですよ!」

本当であればジャスティンの所属している部署の仕事のはずが、独立した組織だとはいえマクベスは、明らかに職務から外れた事をしようとしていた。

「そうですね……、まあ我輩の行動は一種の『節約』だと思ってください」

「は?」

「ハッハッハッ! そう『鳩が豆鉄砲食らったような顔』などなさるな。あなたもお忘れではないでしょうミスター・ジャスティン。『パラディン』が『ハープメイ』を倒すのに、どれだけの犠牲を強いたか」

「それは……―――ん? ほ、ホリー様!」

マクベスが言った事実にジャスティンは返す言葉を迷い、視線を反らした。数秒たった後に元の視線を戻してみると、ホリー自ら東方遠征の申請書にサインをしているのを目にする。

「サインは終わりました。今後『聖果ご加護』があることを祈っています」

「感謝しますミス・ホリー。では我輩はこれで失礼させてもらいます」

サインした申請書をもらい爽やかな満面の笑みを見せ、後にいかにも地響きが起こしそうな歩き方で『エリアーデ大聖堂』を去った。

「いいのですか?」

 あまり納得していない様子で問うジャスティン。

「信じるのも教皇の仕事です」

このことで主人公達にある大きな影響を与えることも知らずに、ホリーはひたすら自分の職務を真っ当するのであった。

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