小説『ラグナロクゼロ(シーズン1〜2)』
作者:デニス()

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5月8日。日曜日。昼。日本。神奈川。商店街。

(やっぱりバーゲンの後の帰りは辛いな……)

とある休み日に相変わらず栄えないことを知らない街道で、両手に食品類がたくさん詰められたビニール袋を持ち、疲労を浮ぶ表情で一人歩いている少年・真堂李玖はそこにいた。
今日は行きつけ商店街でバーゲンセールがあり、買い物したのはよかったが、真堂は帰りに持つ商品の量を計算に入れるのを忘れていた為に、今に至るのである。

「重いぞ……こんちきしょう」

『はぁ〜、今日の夕飯なににしようかしら……』

(あれ、またか……)

予想外の重さに、思わず悔しさ込めたセリフを口ずさんだところ、真堂はまたしても中途半端な時に『読心術』がかってに発動された。当然いつものように、真堂から通り過ぎた人の思考が頭の中から、どうでもいい考えから赤裸々な考えが飛び交って聞こえてくる。その為、真堂はいまだに一年近く謎のままで、特にこれといった収穫はなく、ただひたすら訳のわからない現状に喘いでいた。

5分後。

通りすぎる人々の思考を聞きながら、体力を温存した歩き方をする真堂。

『あの子、昨日の夜はうまくいったのかしら……』

「………」

息子がちゃんと初夜を過ごせたのかを心配する過保護な子持ちの女性。

『この季節、むしょうにツクシのきんぴらが食いたくなる』

「?」

自ら好物に焦がれながらヨダレをたらす男性。

『股間にシップ着けると友達がいらなくなるって本当かな……?』

「!」

かなり意味のわからないことを考えている少年。

『あと5ヶ月……あと5ヶ月でフェ○ト・ホロウ・アタラクシアが発売する!』

(ああ……あの有名ゲーム……)

今年の10月28日に発売する話題のPCゲームに焦がれる青年。

『―――娯楽を楽しむ暇もなく面倒なことばかり……、まったく眷族(けんぞく)は辛いぜ』

「……ん?」

もうすぐ商店街から出ようとしたところ、真堂の前に派手なファッションとサングラスをかけた男が通りすぎた。その時にかなり妙なことを心の中で呟いていたので、真堂は無意識に気になり始め、思わずその通り過ぎた男の方向に振り向いた。

『ん……んだてめえ? なに人の思考をよんでやがる』

「え……!」

同時に男も振り向き、直接口から言葉を発っさず思考で真堂に問いかける。

『気持ち悪い気配出しやがって。まあいい……死んどけ』

ドクンッ

「が……っ―――」

男がそう言った直後、急に真堂の心臓が素手でわしづかみされたような感覚を覚える。男の仕業だと思われる能力で強制的に心臓は止められ、真堂は胸を押さえながら謎の心臓発作に似た苦しみを味わいながら、持っている荷物と共に冷たいコンクリートの地面に倒れる。

『ケタケタケタケタッ! 俺の考えを読んだのが、運のつきだったな―――』

それを見た男は何か引っ掛かるセリフを言い残した後、すぐその場を立ち去った。

「なにを……ま……て……―――」

今やいきなり死に直面した真堂は、倒れた状態でその原因である去り際の男を止めようとするが、気を失う―――

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