「だから―――」
ブ〜ンブ〜ンブ〜ン
「あ! 石川さんごめん―――」
ピッ
その直後。突然真堂の『携帯電話』のマナーモードが震動し始め、石川の熱意がこもった話は一時中断して電話にでた。
「もしもし?」
『あ、李っちゃん! わたしわたし』
この時に、朝早く真堂の携帯に連絡してきたのは姉の真堂智美だった。
「姉さん?」
真堂は(またパシリか……)と、電話越しの姉に対して呆れた表情を浮かべながら、心の中で呟き、ため息まじりに次のように問う。
「なに買い物? 昨日また『月刊エレメンタル』でも買い忘れたの?」
『それもあるけど、今日電話したのは李っちゃんに昨日言い忘れたことがあったから、それを伝えに連絡したのよ』
「昨日言い忘れたこと?」
『そっ。明後日お母さんの見舞いにいくから、当日は昼頃に学校早退してきてね。じゃ―――プツッ』
「ちょっ……なんじゃそりゃー!」
姉の唐突な命令の直後。真堂は隣の教室に響きわたるくらいの声を出して、慌てて姉にかけるが、『あ〜どっかに良い男転がってないかしら……ああ留守ですメッセージどうぞ―――ピーッ』という留守電になっていた。初めてそれを聞いた真堂は―――
(うわぁ〜超殴りて〜……)
後に携帯を握りしめて、真堂は切ない表情を浮かべ、さっきの命令は早急に撤回不可能になり、すでに決定事項になってしまった。
「うるさい下郎ね。なにかあったのかしら? まあ私には関係ないですけど―――」
「あれで李玖くん。いろんな意味で結構忙しいひとだからね……」
真堂を除く二人の女子は、気を使うようにしばらく彼を一人にさせてようとその場を去った。
30分後。
「うぅ〜……」
「ちょいちょいどうした李玖? そんな深海に住んでそうな『ナマコ』みたいな落ち込んでさ」
しばらくした後に教室内は人が集まり、登校してきた神崎洵は気落ちしている真堂に対して朝一番のジョークをかます。
「……面白くない……」
「え〜……」
女々しい口調でつまらなかったことを真堂は神崎に告げ、再び気落ちする。
「おい『チャラ助』。そこどけ」
「獅郎……。いつから俺にそんな『キテ○ツ大百科』の登場人物的なネーミングをつけるようになったの?」
「別に……」
実際に行われているこのやりとりは、いつもと変わらない真堂の日常そのものだった。だが今日はいつもと少し違う、ある出来事が起きようとしていた。
それは―――