小説『ラグナロクゼロ(シーズン1〜2)』
作者:デニス()

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「……もしもし……」

『フッ……元気そうだな』

「きっ……貴様っ! しん―――」

怒りがこみ上げたと同時に聞き覚えがある老人の声だったことでスティークスは、受話器をかけたまま立ち上がり、電話してきた相手の名前を言いかけたが―――

『フェルナンドの死、心からお悔やみを』

「貴様……よくもそんな『心にも無い』ことを」

『本当のこといってなにが悪い?』

相手の老人はちゃかすような話しかたで、スティークスをさらに怒らせる。

「くっ……、とても『自分の国』を滅ぼした奴の口ぶりとは思えんな」

競った言いようで、相手に適した皮肉をこぼすスティークス。

『故に『獅子』は生まれた。やっと眠っていたのに、起こされて機嫌を悪くした『獅子』はその爪でフェルナンドを殺したのさ』

「やはり貴様の差し金か……」

電話の老人は童話を音読するかの如く、穏やか口調でフェルナンドの殺害したことを告げ、そのことでスティークスは一滴の汗をたらす。

『おいおい、理不尽に振る舞ってはいるが、それは筋違いだぜ。お前らだって軽い気持ちで『哲斎』を殺したんだろうが、これはお会い子ってやつだ。それともまた一人失いたいとでも言うのか?』

盟主を脅迫するほどの余裕を表している電話の老人は、声に似合わずかなり意気がる口調で話していた。状況からして冷や汗をかくスティークスは、まるで今この電話の老人に器量を計られているようで、疑問を抱かずにはいられなかった。

(まさか、わずか短期で自分の組織をここまで大きくさせるとはな……、謎に満ちていて侮れん奴だ)

『死んだあいつには悪いが、お前らが殺した『哲斎』は小物に過ぎんぞ』

「なん……だと!」

先手を取ったつもりが、実はそうでなかったことを聞いたスティークス。そのことを聞き対立する立場である盟主自信は、自ら束ねる組織よりはるかに未知であった組織・『桜』の幹部である『矢島哲斎』が、なぜ並大抵に殺せたのかがすぐに納得した。

「くっ……!」

『まっ、せいぜい俺を探すのはやめといた方が『身のため』ってやつだぜ。本当だったらフェルナンドだけじゃ全然たりねえくらいだがな。過去にてめえの『スタンドプレー』で起こした『イラク戦争』と、その他の『借り』は後々返してやる』

まだ他にも仕返しをするネタがあることを、電話の老人は告げる。それを知り、これ以上組織が苦労して積み上げた物を崩されてはかなわない。そう思ったスティークスはすぐに返答する。

「も、戻る気はないか……?」

『あ?』

スティークスはぎこちない言い方で、電話の老人に組織に戻ることをすすめる。が―――

『―――バカかおまえ?』

「くっ……!」

スティークスの発言は、たった1%の確率の賭けに出たことに過ぎず。そのことで電話の老人に苦笑されながら『バカ』と着けた一言に、スティークスは自らの無力さを呪うように、徐々に怒りをこみ上げさせていた。

『散々おれに暗殺者や刺客やら差し向けておいてよく言うぜ。特に『中東』にいた時が一番たちが悪いかったなあ〜……』

「うっ……」

突然たまった欲求をぶちまけるかの如く、完全に意気がっている電話の老人はあることを話しだす。

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