獅郎が話しの本題に切り替えようとした矢先、横から一人の少女が口を挟んで来た。
「?×2」
真堂達は声をかけられた方へ視線を向けた。
すると一見真面目そうな面持ちをし、後ろ髪を二つにまとめているその少女は、真堂と同じクラスの『石川岬』だった。
「石川さん? 聞きたいことって」
「二人はその……『ホモ』なんですか……」
「は?×2」
明らかに勇気をふり絞ったような発言に、真堂と獅郎は同時に唖然とした。
「何故に……ホモ?」
唖然しているとはいえ、石川の発言のせいで少し力が抜け、真堂の返す言葉が弱々しく聞こた。
「その、違うのよ―――」
やっぱり言わなきゃよかったと言いたげな態度で、石川は真堂の視線を痛く感じながら両手で赤面した顔を隠す。
「………だれ?」
石川とは面識がなかった獅郎は、唖然とせずただキョトンとしながら二人の会話を見ていた。
「獅郎は会ったことはないっけ?」
「……どうも初めまして、石川岬です」
「よろしく……」
石川が挨拶を交したところで、真堂は突然の発言について問う。
「それで……ホモっていったい」
「いや……その……なんかいつも一緒にいるから……かな?」
「あ〜なるほどそういうことか」
真堂はその一言で全てを悟った。要するにいつも同じ男の友達と一緒にいる事によって、他者から見た印象だと『そっち系』の人と思われるのは、当然のように誤解されやすい結果だった。
「ちがうちがう、まったくそういうのじゃないから」
「そう……なの?」
『そうだよね、やっぱ聞くのはよそう』
「ん?」
真堂は石川の質問にどことなく違和感を感じた矢先に、少し石川の心の声が聞こえた。どうやらさっきの用事とは、どこか違うことを訪ねようとしていたらしい。
能力といっても相手の『心の中』を読んでも、あまりいい気分ではない為もあり、真堂はそこまで頻繁に能力を使えるわけではなかった。
どうでもいい誤解が解けたところで、石川はクラス委員の仕事があった為、真堂達を後にしてその場を去った。
「……悪い人じゃないのは確かなんだけど」
「どんなやつなんだ?」
頭を傾け、石川をどういう人間なのかを少し考え始めた真堂。
「どんな……人のかって言うと、入学式に校舎があんまり広くて、どこに自分のクラスがあるのか分からなくってさ。その時、石川さんが親戚にクラスを教えてくれたんだよ」
「ふ〜ん」
「それでね―――」
しばらく真堂は石川について話した後、授業が始まるチャイムが鳴った。