小説『ラグナロクゼロ(シーズン1〜2)』
作者:デニス()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

数分後。

「ごっめーん! 李っちゃん待った〜?」

やっとのことで来た『姉・智美』。一方待たされた真堂はかなり不機嫌な表情を浮かべながら、姉を迎える。

「……なんで遅れたの?」

冷めた眼差しで真堂は姉に遅れたの理由を問う。

「うふふ〜、よくぞ聞いてくれました。実はね―――」

(いやな予感……)

「逆ナンさーれたーのだ〜!」

(やっぱり……)

智美が何時間も弟を待たせた理由は、病院に行く途中で見知らぬ男性にお茶に誘われて、真堂をほったらかしにしながら、そのまま遊んでいたのであった。

「いや〜、そのナンパしてきた人が私好みのイケメンだったから、つい誘いに乗っちゃってさ〜―――」

「………」

「おまけにすごいお金持ちで紳士だし、結構その人の虜になっちゃって―――」

「………」

「あまりにも気が合うから、ホテルでよろしくヤっちゃいました!」

謝罪もせず、あげくのはてには自慢するような姉の不謹慎な態度に真堂は―――

「ん、李っちゃん……?」

「姉さん……頭にゴミついてるよ……」

「え、どこどこ?」

急に落ち着いた面持ちと態度で姉に対して気を使う真堂に、智美は頭の上をさらしから―――

「……取るよ―――」

ゴスッ!

そのまた数分後。

「李っちゃん。「ごめん」って言ってんじゃん」

「………」

待ち合わせをした時に、真堂は姉を不意討ちで頭を殴りつけた後に、病院内の面会の受付を済ませ、母がいる病室に続く廊下を歩いていた。

「イテテテ……、なにも殴ることないでしょ〜」

真堂に殴れた時にできた『コブ』に手を添えながら歩く智美。

「いや、あれは明らかに『自業自得』でしょうが!」

智美自信が弁解できる立場ではないことを告げる真堂。かなり拍子抜けしたイラ立ちの末、ついに母のいる病室の前に着いた。

「………」

病室の扉を目前にして黙り込む真堂は、過去に母から拒絶された時の光景を脳裏によぎらせ、その扉を開けるか開けまいか今頃になって迷い始めた。

「李っちゃん。あたしが開けようか……?」

しばらく立ち止まっている真堂に対し、『葛藤』をしていることを悟った智美は、緊張をほぐすかのように肩に手を触れる。

「いいよ姉さん……。いつまでも会わないわけにはいかないからさ……」

真堂は(またあの時のように拒絶されるのではないか?)と、心の中でそう自問する。その理由は過去に母である優子に、真堂は素手で『絞殺』しかけられたことがあり、それいらい数年間『面会謝絶』されていたが、それから主治医の判断で面会が出来るように連絡があって、今のような状況に至る。

(……よし!)

ガラガラ

覚悟を決めた真堂は扉を開けた。

「うっ……!」

病室の中は『窓に射す日光』に満たされていた為に視界が一時遮られた。が、数秒で目が慣れ始めた真堂は信じられないものを目撃した。

「かあさん……!」

-151-
Copyright ©デニス All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える