小説『ラグナロクゼロ(シーズン1〜2)』
作者:デニス()

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(以外と優しそうな、ダンディーなおじさまってとこかしら)

先客の男の顔を見て個人的な評価をし始めた智美。容貌の方は引き締まった寛大そうな面持ちと、冷静さを感じさせる少ないシワをしていた。

「改めて挨拶させてもらうと私はローレン。ローレン・ギア=アルスター2世だ」

「ローレン……ああっ! もしかしてあなたはアルスターカンパニー社長の『ロギア』ではないですか!」

先客の男の正体が『ロギア』だと知ると、面食らった状態で態度を改めた智美。

「姉さん知ってるの?」

大企業の社長と言うからには、面識のないロギアがどこかの『セレブ』かなにかとだと思った真堂は姉に問う。

「あんたなに言ってんのよ! 『アルスターカンパニー』と言えば、アメリカ本社を除くフランス、ドイツ、ロシア、中国、インド、日本といった六つ大国に支社を持つ大企業なのよ! あんたそんな有名な企業を知らないなんて、常識はずれにもほどってもんがあるでしょ!」

「そんなこと言われても……」

世界中の一般のニュースで経済関連を取り上げた話題は、当然のように『アルスターカンパニー』が幾度か出ている。智美の仕事(ジャーナリスト)の上で持ち合わせている知識はともかく、真堂の場合はまだ経済に対して意識する年頃ではない為、しかたなく部分的にその知識を持っていなかった。

「我が社の評判を耳に入れてくれるとは光栄だね。こっちも働いているかいがあるってもんだよ。ハッハッハ!」

「い、いいえそんな……」

(なんか、ちょっとだけ父さんに似ているな)

一つの大企業を束ねる者としてロギアは智美の発言に、素直に喜びの意を表すように笑みをこぼす。それを見た真堂はいくら無知な部分が目立つとはいえ、社交性に長けたロギアの紳士的な振る舞いに、親近感が湧いた表れとしてある問いを投げる。

「アルスターさんは母とはどういうご関係なんですか?」

「「アルスターさん」なんて堅苦しい呼称はよしておくれよ。今日は社長という肩書きはひとまず置いて、友の前では社会的階級も関係なく無礼講で来ているのだから。そうだな……私のことは『ロレン』とでも呼んでおくれ」

「わかりました。ロレンさん」

「フフ、昔から変わってないのね、その『アダ名』」

陽気に振る舞うロギアの横に優子が口を開く。

「母さん?」

元気になったばかりの母の口数が増えていくことで、真堂は普通に接することができた。

「子供の頃、孤児だったあなたがアルスター家に引き取られるまで、よく遊んだものよね」

「いやー、懐かしいな。昔は夏に海で創一とよく泳ぎの競争していたっけ」

「へ〜、以外だな。ロレンさんはここ(神奈川)の出身なんですか?」

友人であるロギアの前で過去を振り替える母に、真堂はかつての両親の知り得なかった一面を詮索する。

「正確には『大磯』の出身なんだがね。詳しく話すと―――」

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