小説『ラグナロクゼロ(シーズン1〜2)』
作者:デニス()

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「あー、もうお耳に入れてましたか! どうです私の力は? 『ポーランド』で起こしたほどではありませんが、最近この町の人間を13人ほど自殺に追い込んだのですけれど……―――ん〜……どうやらその顔からして、まだ私の『アピール不足』というものでしょうか?」

最近になってここ神奈川で突然、自殺者が急増したという出来事はニュースの話題でもなっている。この事件性のかけらもない世間的な話題の概要は、社会秩序の欠陥と不信及び社会環境の不適合な点による暴露だと、主に取り上げられている。だがこれは単純に「そうではないのか?」という世論の『勘(かん)』に過ぎず、実際はとても信じられない方法で発生させられていた。

「やはりキサマの仕業か……」

「文字通り『悪魔の所業』と、いうものです。ケタケタケタ!」

自殺者の急増とロギアの機嫌を損ねたそもそもの原因は、今この場で奇妙な笑い声を発している中級契約者もとい有力な悪魔・ハープメイの仕業だった。

「……どうもきさまは『自分の立場』がまだ分かっていないことが、一番の難点だな」

「ケタケ……は?」

両腕を組むロギアの言っていることに、ハープメイは笑うことを中断した後に首をかしげた。

「言っただろ。「ヤンチャが過ぎた」とな」

「なんのことやら?」

(こいつ……)

天然とは別に本当になんのことかハープメイは知らず、額に血管を浮き上がらせながらロギアは呆れてなにも言えずに、心の中で少し呟くだけだった。

「先月。キサマが休暇中の目立った行動で、『ミセリコルディア財団』に存在を知られ、ここ日本に『パラディン』を派遣された。しかもやっかいなのが、その派遣された『パラディン』が『団長クラス』だってことだ! もしおまえと私の関係が『財団』に知られれば、我が社が有する六つの支社うち二つの支社が潰される。そうなれば私は手足もなくなったも同然の損害を受けることになるんだ」

「ああ、確かにやっかいですな―――うっ!」

「他人事みたいに言って……、誰のせいだと思っているんだ……!」

「ず、ずびません……」

いい加減な発言を聞いて、ついにキレる一歩手前まできたロギアは、すぐさま首を締め上げるようにハープメイの服の袖(そで)を掴み、かなりイラだった表情を見せ付ける。

「4年前。『ワルシャワ』でキサマが、浄化寸前だった所を救ったのは誰だ?」

「あなたです……」

「前の『主君』に見捨てられ、居場所がなかったキサマを迎え入れてやったのはどこのどいつだ?」

「他でもない。あなたです……」

「今にも私に大迷惑をかけようとしているバカどいつだ……」

「はい。私です……すいませんでした」

「わかればよろしい」

袖を離して正座させられたハープメイに対して、ロギアは質問と悪口を織り混ぜた説教をした。主人としての威厳を示したのである。

「はい……。それで私を呼んだ要件とはなんでしょうか……?」

「やっと本題を聞く気になったか? 『掃除係』でるおまえにはある『女』を始末してもらう」

「ある『女』……ですか、そいつはいい。ケタケタケタ! で、その詳細は?」

『女』ということを聞いたとたんに、さっきまでロギアに叱られショゲていたハープメイは、その件に積極的になると同時に笑顔を取り戻し始めた。

「『女』は今年になってここ町(神奈川)に来て、西新宿にある『日本支社』を指揮する『神崎正志』の動向を知る為、身近な人間を手当たり次第に探っているらしい。『アルマゲスト・ロゴス』の件もあって、おまえにはその『女』の処分をまかす。方法はおまえの自由で構わん、だがくれぐれも私の不利益な証拠を残すな。さもなくば―――」

『ケタケタケタ! 分かっていますとも、私の『主君』であるあなたに直伝の『忠義の意』というものを示しましょう。なんせ私はあなたの中にいる者の『眷族(けんぞく)』なのですからね」

「そうでなければ困る。おまえは私の数少ない『手駒』の一つなんだからな。要件の方は抜かりなく頼むぞ、ウルトレス・スケロルム=ハープメイ」

「御意のままに『我が君』よ―――ケータケタケタっ!」

手駒(部下)がやっと要件を聞き理解したことで、精神的な疲労を浮かべる表情するロギア。一方で仕えている主君の依頼を承ったことで、ハープメイは魔術師の如く煙のように消え、部屋を去った後にさっそく行動に移るのであった。

(そういえば……最初っから今の『力』使って、部屋に入って待っていればよかったんじゃないのか……?)

それと『中級契約者』であるハープメイだと、ポテンシャル(能力)の一つで『ワープ(瞬間移動)』の一種としての移動手段が使えるようになるのである。その能力を間近で見たロギアは、いちいち気にすることもない疑問を呟いたことは、今さっき部屋を立ち去ったハープメイは知らずにいた。

ただこれを契機に、少年の生活を一変させる『闘争』の表面化を一途をたどるとしても―――

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