(……アベルさん!)
人影を見せた主は腰にまで届く長い髪を持ち、頑丈そうな筋が刻まれた筋肉質の腕と細い長身でいるアベルだった。
(なんでこんなところに……?)
かなり久しぶりに見かけた為に怪しく思えた真堂はなぜか用事を忘れて、すぐさま尾行する体制に入ってしまった。
(『将龍軒』の出前にしては遠すぎるよな……)
この状態で明らかに誤解をうむ行動をしているのは自覚していが、どうにも真剣の心境はまず罪悪感よりも、まるで我を忘れたかのように今やっている行動を真剣に取り組んでいた。途中でアベルになんとか声をかけようと、タイミングを計るのが何度かあったが全部はずしていた。
数分後。
「―――ここは……?」
黙々とアベルを尾行し続けて着いたところは、一見今にも崩れそうなイメージをがあり、それでいて広い敷地内を持つ廃ビルだった。
「なんでこんなところに? ……っていない!」
アベルの行動を妙に思いながら真堂は途中で瞬きをした。すると、さっきまでバレずに視覚でとらえていたはずのアベルがいなくなっていた。
「一体どこに―――」
ガッ
「うむっ! むー!」