小説『ラグナロクゼロ(シーズン1〜2)』
作者:デニス()

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「『情報』というと……?」

「内容は財団の高官達に潜んでいると思われる、『裏切り者』についての情報です。しかもその『裏切り者』は、殺されたお母上の件と関与しているとのことであります」

「そ、そんなばかな! その高官達は、みな長く父と母と苦楽を共にした者達ばかりなのですよ! そう易々と裏切るようなことはありません!」

唐突告げられたフランツの言葉に信じられずホリーは、すぐに怒りがこみ上げた状態で立ち上がり断言する。

「お気持ちは分かりますが、自分が今言ったことが事実には変わりありません。できれば確実な証拠をお見せしたいところですが、情報が漏れるのを避ける為、これ以上なにも言えません。ですから常に命が狙われていることを覚えていてください」

「そう言われても、私は一体どうすれば……?」

先ほどフランツの話した情報の概要と忠告を聞いた後、自らの命の危機にまで関わっていることにより、ホリーは彼の話をただやるせない気持ちのまま、信じるしかないことを悟る。

「そう心配なさらずとも、しばらくホリー様はただ常に身の回りの警戒を厳にしてください。自分はその間に行動をお越しますゆえ―――」

「っ……」

フランツ言うことを黙認するホリー。それ以降、会談はぎこちなく終わり、二人は喫茶店を出ていった。

(本当にこんなことで大丈夫なのでしょうか……)

自ら黙認したとはいえど、ホリーはここに向かう際に近くの駐車場に停めた一般車に向かい、胸に抱く不安を自問する。

駐車した一般車の中に入り、ホリーは後部座席に座る。

「会談は順調にいきましたか?」

当然その車内には彼女が戻るのを待っていた、執事及び運転手・ジャスティンも乗車していた。そこで彼は戻ってきた彼女に対し会談のことについて問う。

「一応……なんとか―――」

体調が優れない様子で返答するホリー。

「その様子だと、なにかとんでもない話でも持ち掛けられたのですか?」

この時、国際会議を後にし、密会を終わらせてからしばらくしてから、事態は思わぬ展開を見せる。それは―――

「察しがいいわねジャスティン。実は―――」

―――地鳴りを始めとし、空気を揺さぶるほどの爆発音が周辺に響く。

「―――な、何事です!」

急なことに混乱し始め、状況がつかめないホリーはジャスティンに問う。

「わ、わかりません! 駅の方で、なにかあったらしいですが……」

ジャスティンは駅の方角に煙がたっているのを見て状況を予測した。

「駅……あそこにはフランツ様が……まさか!」

一方でフランツは喫茶店を出ていってから、途中でスーツを着こなした女性のボディーガードと共に、エッジウェア・ロード駅に入って行ったのを見たホリーは、彼の身になにかあったのではないのかと、不安をつのらせる。

「わかりません。とにかく今はここを離れましょう。安全な場所を設けてからでも遅くないとは思いますので」

とにかく今は主人を守るのを優先したジャスティンは、持ち前の冷静な判断力で、すぐに車を走らせ、二人はその場から去っていった。

ただこの日、爆発があったのはエッジウェア・ロード駅だけではなかった。他にも首都・ロンドン市内において、あわせて3ヵ所の地下鉄がほぼ同時に爆発されたのだ。しばらくしてバスもその被害が確認された。実は翌日に知られたことだが、この出来事は50人の以上の死者をだし、『アルカイダ』が起こした『テロ』たっだ。

それから2005年7月7日に起きたこの事件は、後に『ロンドン同時多発テロ』と称された。

 (私は……変わらなければならない……!)

この事件を機に無力な立場を改めて自覚し、そのことで自らの立場から招いたと思われる、運命(さだめ)に従うことをやめ、逆に抗うことを決めた『銀髪の聖女』なのであった。
そして密会の途中でフランツが話した『東方遠征』の最後に起きたある出来事とは―――

ここで時間は2日前にさかのぼる―――

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