小説『ラグナロクゼロ(シーズン1〜2)』
作者:デニス()

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同時刻。廃ビル。一階。

「来てしまった……が、これは一体……」

アベルの言うとおり帰宅したはずの真堂。
廃棄されたビルとはいえ、建物事態の電気系統はギリギリ生きていた。そのこともあり唖然とする彼の目の前には、大量に気絶している『人の山』を目撃することができた。おそらくアベルが一階に集まった悪魔達を全員蹴散らし、憑依されていた人間達を解放したことで気絶したのだと思われる。

「『木の杭』一本でこのありさまだと、まるで『ヴァンパイア・ハンター』かなにかだな……灰は無いけど」

かつて真堂がツ○ヤで借りた『某吸血鬼物の作品』の内容を思いだし、アベルの予想以上の強者ぶりに改めて感心した。

(ざっと20人以上はいるな……。でもあんな木製の武器だと帰ってあぶないような気がするんだけど……、大丈夫だろうか?)

二階えと続く階段に向かう真堂。彼はなぜ言いつけを守らずに廃ビルに戻ってきたのか、その理由はアベルが所持している武器と、自らの性(さが)にあった。
アベルの普段着であるTシャツやジーパンはともかく、手持ちの武器はたった一本の『木の杭』だという。それに関して真堂はかなり不安でしょうがなかった。
なにせその主な理由の一つが、武器事態が耐久性に劣る木製だという、明らかに攻撃が何度も可能とは思えない点である。
そして何より重要なことは、この廃ビルに自殺させられた多くの人と友人の仇がいるというのに、それを全てアベルにまかし、オメオメと帰って寝るなど、そんなことは真堂にとって例え足手まといだとはいえ、自らが許せない行為でもあったのだ。

(今だったら使えそうな気がする……)

真堂は両方の拳を強く握り締めながら階段を登る。そんな時もうすぐ死地に向かうことで、数回使っていることもあり、自分の中に眠っている『謎の能力』がまた発動する予感がした。

(親玉を倒すくらいの力が出せたらいいんだけど……よし!)

さすがに未知数なところが多いゆえ不安は募るが、だからといって他に頼るものもなく、真堂はいちかばちかの賭けにでようとした。
すると―――

「―――ダアアアコラァァァー!」

もうすぐ真堂が二階に行き着こうとしたその矢先、向こうから奮闘をするアベルの気合いが入った声が聞こえた。

「ギャァァァー!×5」

それと同じくして、さらに数人の悪魔の叫び声も真堂の耳に入り、二階はかなりの激戦が繰り広げられているのが悟れた。

「あの人は一体なにものなんだろう……?」

向こうは後退りをしてしまうほど何度か悲痛な叫び声が繰り返されていたが、それでも進みながら真堂は改めてアベルの正体について思考を巡らす。

そんな中、今激戦が繰り広げられている向こうの現状は―――

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