小説『ラグナロクゼロ(シーズン1〜2)』
作者:デニス()

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「―――せいやぁー!」

突然ビックリ箱でも開いたような勢いでドアが急に開き、そこに出てきたのは両目に『黄昏の眼光』を輝かせる真堂の姿だった。

「李玖!」

「なんだぁ? ガキはすっこんでろー!」

悪魔達は敵がひとり増えたところで、なにも動揺することなく罵声を発し、すぐさま攻撃という臨機応変な様子を見せる。

(今はこの能力がなんなのかはどうだっていい……。石川さんや他のみんながもう犠牲にならない為にも、今は目の前の敵を撃つのみ!)

事前に心の準備を済ませたことで真堂は、残りの悪魔を一掃する為、あまり自覚はないが決死の奇襲をかける。

「ドケヤァー!」

(見える!)

刃物同然の鋭い爪で真堂を攻撃するひとりの悪魔。だが謎の能力の発動に成功した真堂にとっては、無意味なことだった。
彼の視覚は透明な淡い黄色になるが、そのことで相手の動きがゆっくりと見えた。

「―――あ?」

当然相手はそんなことは知るよしもなく、のんきな声を発したと同時に、自らの懐が真堂にあっさりと入られていた。

「貫けぇー!」

「がは……ば、かなっ!」

その悪魔の胸(急所)を貫くという、一年前、真堂が最初に『盲目の悪魔』を倒した方法で倒した。

「ひ、ひやぁ〜!×2」

さっきの仲間のやられようを見て残りの悪魔達は、すぐに『実体化』から『霊体化』に切り替え、そのまま逃走していった。
後に真堂は後ろにいるアベルの方に振り向く。

「り、李玖……おまえその目……」

思わず目を丸くするアベルは、さっき真堂が見せた能力とまだ光り続ける両目にに関してすぐに問う。

「あなたに秘密があるように、俺も秘密があるんですよ……」

誰にも知られたくないものを見せてしまったことで、やるせない気持ちが入った言葉を口にする真堂は、一時能力を解いた。

「おまえ……」

そのことでお互いしばらく沈黙が続いたが、アベルは仏頂面を浮かべた状態でそのまま三階に続く階段えと進み、真堂から通り過ぎようとしたその瞬間―――

「―――え?」

アベルは真堂の肩にポンッと手を添える。

「今の俺にとっては、これ以上のよけいな犠牲を出さない為に行動している。李玖、おまえはなんの為にここに来た?」

まるで人を試すかのような物言いで問うアベル。

「石川さんの……友達の―――」

「敵討ちか?」

「違います……! いや……そういわれてもしょうがないと思います。だけど俺はあの事件(911)以来、これ以上人が死んだことで悲しむ人を増やすのはもういやなんです!」

共闘することを目的に言ったその言葉に嘘偽りはなく、ただあの『テロ(911)』で桜吹雪の如く、大勢の命が散ったのを目撃した真堂にとっては、ひたすら今の戦い志願することしかできなかった。

「そうか……おまえが何者でなんなのかは、どうだっていい。ただおまえが今起きているこの異変をどうにかしたいなら、俺は無理に止めねえよ」

「アベルさん……」

アベルは同じ人間だと認識したうえで寛容な語る口だと思い。真堂は大きな安心感で心を癒され、落ちかけていた本来の士気を取り戻せた。

「この最上階に悪魔の親玉がいる。今のおまえだったらなんとか倒せるかもしれねえが、その覚悟があるからここに来たんだろうな?」

「もちろんです!」

「そうか……、ならついてこい!」

そのまっすぐな瞳を見たうえで、真堂自らの覚悟を再度確認したアベルの返答により、共に戦うことが決した。

「はい!」

意気揚々と二人は次の階に向かおうとするが、この時、そこに行き着くまで真堂はあることを知らずにいた。

残虐な使命を背景に、喜びと快楽による悪行を重ねる悪魔の本質というものを―――

一方。しばらく待機していた二人のパラディンは真堂が二階に上がった頃、すでに建物の一階に侵入していた。

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