「まさかこんな大人数を平らげるとは……、一体何者なんでしょうか?」
真堂と同じく、気絶した人の山を見て当然の疑問を抱くクラウス。
「まあなんにせよ『骸の山』よりかはましですな。ミスタークラウス、せっかくの初陣の場を壊すようで申し訳ないのだが、あなたには救護活動をしてもらいます」
ベテランゆえに場慣れをしているマクベスは、この状況で人命救助を優先とし、クラウスに命令をする。
「はあ……わかりました……」
それを機に緊張がほぐれたと同時にクラウスは、結局なんの戦闘も活躍できなかったことで、少しぎこちない応じ方をした。
「ただ一人でやれとは言いませんが、専門の救助班は我輩が前もって『崇妻財団』に連絡をしました。あなた詳しい状況の説明と避難誘導及びビル周辺の浄化作業の指示をしてください」
「わかりました。それはいいんですがマクベス神父……」
「ぬ? どうかなさったのですか?」
マクベスは上に立つ者ならではの指示を伝えるが、それを理解したもののクラウスは、正面口にある異変に気付がつく。
「あれ……、パラディンに所属する前に『初心講習』で見た気がするんですけど……」
「ん……? ぬぬ!」
妙に思いながらマクベスは、クラウスが指をさしている正面口の方え向く。するとそこには黒い濃霧のようなものが漂っていた。
「あれって……、大気から発せられる、実体化した『アルコン』ですよね。ということは……」
「援軍ですな。まちがいなく……それにかなりの……」
精神的に危険な物質である『アルコン』。それがかなり濃い霧状に舞い上がっていることは、大量の悪魔がビル内に入ろうとしていた。
「と、とにかく生存者を安全な所え!」
「時間がないので、できるだけそこの隅へ! その後であなたはすぐに抜刀し、我輩の後ろを頼みます!」
「ええ! いきなりですか!」
「早く。来ます―――」
突然の援軍に一人だけ慌てるクラウスだが、なんとかわずかな臨戦態勢を築く為に指示を欠かさないマクベス。3階に向かった真堂達と合流するかに思えた二人だが、急なことで足止めをくらい、1階でしばらく交戦をすることとなった。