小説『ラグナロクゼロ(シーズン1〜2)』
作者:デニス()

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「――――なんで……なんでこんなところにいるんですか―――美麻さん!」

ハープメイの隣にいる催眠状態の青い目の美少女の正体は、2日前に操っている本人じきじきに誘拐された殿難美麻だった。

「あぁ? なんだ知り合いなのか、俺の可愛いマイドールちゃんと?」

「………」

「美麻さん……俺です李玖です!」

「………」

ハープメイは不思議な偶然に首を傾げ、美麻は名前を呼ばれても催眠状態の為に返事ができずにいた。

「ケタタ……今のこの子は俺様の人形だからな、どんなに声をかけても無駄だよ。ほれっ!」

「な……!」

美麻が返事ができない理由を言ったハープメイはその直後に、自慢気に片手で彼女の体をマサグリ始めた。

「やめろ! 汚い手で美麻さんに触るんじゃない!」

「あのなあ……人をどんなに汚そうが弄ぼうが、てめえみてなガキに、俺のやることに口を出す義理なんざねえんだよ! 好きな時に貪り! 犯し! 殺し尽くす! そのことで人間達が減るとしても、この世界じゃあそこいらのもんは虫のようにわくからな、決して命を完全に絶たれることを知らねえ。だから俺達悪魔にとっての人は家畜やゴミ同然なのよぉ! ケタケタケタケタ!」

まさぐるのを解いてからハープメイはサングラスを外し、恐れのせいか懸命に立ち上がろうとする真堂の顔に近づき、至近距離で自ら悪魔としての本心を説いた。

「そ……そんな……!」

あまりにも非常識で卑劣な内容に固まってしまったが、なにより驚いたのはハープメイが、自分でサングラスを外したことで露出した両目にある。
それは強力な悪魔の憑依よって起こる大きな特徴で、両目に何種類に一つの動物の眼球が宿る。ハープメイの場合は不気味な横長の目で、具体的に例えると『ヤギの目』によく似ていた。

「ケッタッタ、さ〜て言いたいことも言ったことだし、お前らもうあきたのからそろそろ死ねや―――」

あきた様子でハープメイは真堂に背を向け、少し離れてから再び自らの能力で、周囲に空気やタバコの煙を固体化させた。それにより半透明で、数本の鋭い突起物を針状に形作り、明らかに真堂を何本かで串刺しにする為に用意したものだった。

「じゃあ、お達者で〜。ケタケタケタ!」

一方で向こうにいた美麻の腕を掴んで彼女を連れて行こうとし、ハープメイは指を鳴らした。

「あぐ! く……そ……」

それを合図に素早い勢いで突起物は迫る中で、焦りに焦る真堂。ハープメイの最初に殴られたせいで、極度の立ちくらみに陥り、あまり身動きができなかった。

「まずい!」

心拍数は一気に急上昇し、再び真堂に名残惜しい死が迫りくるが―――

「―――り……李玖くん……」

「……え?」

死が確定したと思い、目を閉じ覚悟を決めた真堂。だがその時、耳にしたのは肉体が何度も突き刺さる生々しい音と、優しさがこもったわずかな低い女性の声。

「よか……た……」

二言目で真堂はゆっくりと両目を開けると―――

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