小説『ラグナロクゼロ(シーズン1〜2)』
作者:デニス()

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クレア=レイルフォードの自宅玄関前―――

夜中の8時。真堂は扉の前に優しくノックし、家主が出てくるのを待つ。

「すみませーん……。やっぱ遅くに悪かったかな」

「ハーイ、今行キマス」

扉の向こうに聞こえ、独特ななまりが効いた一声で真堂は少し安心した。

「オ待タセシマシタ。李玖サン」

扉を開けた人物はブラウンの天然パーマな髪型と、おっとりとした眼差しをしている。クレア=レイルフォード本人であった。
クレアは客人の顔を見た瞬間、笑みを浮かべながら真堂を歓迎した。

「こんにちはクレアさん。今日は相談事があってきたんですが……」

「オウ、私ニ相談デスカ? 分カリマシタ。トリアエズソンナ所にイナイデ家ニ入ッテクダサイ」

「そうですか……じゃあ、お言葉に甘えて……」

クレアのテンションの高さに若干引き気味でいながら、真堂は家に入った。

家の外から客間えと真堂を移動させた後、クレアはキッチンにある買ったばかりの紅茶を二人で飲みながら相談に移ろうとしていた。

「それで相談したい事なんですけど―――」

客間に移動してからしばらくした後、さっそく本題に切り替えた真堂。クレアにこの一週間、自分があの教会に行って奇妙な事が起こった事と、超能力に目覚めた事を話した。

「教会ニ入ッテカラ聞コエテクル謎ノ声ト超能力デスカ……」

「はい……」

不安混じりに応じる真堂。

「……超能力ノ方ハ力ニハデキマセンガ。教会ノ事ニツイテハ知ッテマス。オソラク李玖サンノ言ッテイルノハ『願いが叶う教会』ノ事デショウ」

「願いが叶う教会……ですか?」

「ソウデス、私ガココニ引越シタバカリノ頃、真堂サンガ言ッテタ教会ニ祈リヲ捧ゲルト願イガ叶ウトイウ噂ガ広マッタ事ガアリマス。私シノ場合ハ、タダ小耳ニ挟ンダダケデ余リ詳シクハ知リマセン」

クレアが言うように、その願いが叶うという現象は、実際に叶うのではなくほとんどが偶然の産物に過ぎなかった。

「そうですか……」

クレアに相談した事で教会について新たな謎が増えた。それにより、あの教会の真実えと遠のいたようで真堂は頭を抱え、虚ろな目をしながらうつむいた。

 「李玖サン……?」

「……は! あ、ありがとうございますクレアさん。おかげで教会の事について少しわかった気がします」

「オウ、ソウデスカ、オ力ニナレテヨカッタデス」

クレアは嬉しそうに両手を合わせながら応じ、真堂に茶菓子(クッキー)をごちそうした。

「ハァ……モウアレカラ3年ガ起ツンデスネ」

「え?」

茶菓子を食べている真堂の様子を見ながら、クレアが持ち込んだ話しは911の事だった。

「あぁ……そうですね」

突然言った話しの内容に、真堂はどう応じれば良いのか困っていた。

「李玖サンガ父親ヲ亡クシタヨウニ、私モアノ911デ恋人ヲ亡クシマシタ」

「確か……ジェイムズさんでしたっけ」

ここはとにかく真堂はクレアの話しに合わせる事に決めた。

「イエス。ココニ引越シテカラ去年、李玖サンノオ兄サンガ学校ノ都合デ2、3日私ニ預ケタ時ガアリマシタヨネ。ソノ当日、私ハマダ『ジェイムズ』ノ死ヲ未ダニ受ケ入レラレズ、隠レテ泣イテイタ日々ガ続イテイタ頃デシタ。ソンナ時、李玖サンノオカゲデ私ハ立チ直レルコトガデキマシタ」

3年前。ジェイムズ=カーターというクレアの婚約者が911で亡くし、父親が精神的療養をする為、日本文化に惚れこんでいた娘を日本に引っ越させた。それでも恋人の死を受け入れられずにいたそんな時、真堂がクレアにある言葉をかけた事で立ち直れることができた。

『自分が言えた義理じゃないと思うんですけど、その人が死んだとしてもまだその人は、あなたの心の中に生きてると思うんです』

クレアの脳裏から浮かび出されたその言葉は、2年前に孤独を感じて泣き崩れていたクレアを慰める為、真堂が同じ境遇の人に対して口にした言葉であった。

「ああ……あの時……」

「デスカラ真堂サン。私ニ力ニナレルコトガアッタラ、ナンデモ言ッテクダサイ」

「クレアさん……」

真堂はクレアというもう一つの心強い仲間を増えたと同時に、今度あの謎の声が聞こえる教会に行くことを決意した。

「もう遅いんで、このくらいで帰らしてもらいます」

「オウ、ソウデスガ? モウチョット話シタカッタノデスガ」

「すいません」

真堂は明日の学校に備え、クレアに相談にのってくれたお礼をした後、自分の家に帰っていった。

 だがその矢先―――

「ん?」

クレアの自宅から出た直後、突然、ポケットに入っている真堂の携帯電話が、マナーモードで震えだした。

「なんだろう?」

真堂は二つ折りの携帯電話を開けて、画面を見たらメールが受信されていた。

「……なっ! また……このメール」

そのメールの内容を見た瞬間、真堂は慌てた様子で家を後にし、どこかえ移動した。

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