「ここか……」
薄暗い見知らぬ立体駐車場。家を後にした真堂はこの場所に着いてから、あることを考え始めた。
一週間前。真堂の携帯電話から何度か届いた、謎のメールがことの発端だった。
アドレスは見知らぬもので、そのメール内容自体は三つある。
一つ目は「君はこの世に神が居ることを信じていますか?」と、なにかのいたずらだと思い無視した。
だが二つ目のメールは「不老不死なりたいと思ったことはあるかい?」と、次第に意味不明な内容に仕上がっていた為、真堂は少しだけ気になり始める。
そして三つ目の今日は「君が体験したあの911は、ただのテロではない。真実が知りたいなら、『×××‐×××‐×××』朝までにこの住所に従い、立体駐車場の三階にこい」とのこと。メールの内容は、明らかにあの事件を語っている。さすがにイタズラメールにしては個人的にかなり立ちが悪く、真堂は無知なゆえ、躍起になる感情に歯止めがかけられず、一人で乗り込んで来てしまった。
「なんなんだよ……いったい……」
メールの送り主を気がかりだが、真堂は妙な事に気が付いた。それは待ち合わせ場所に着いてから、車が一個も駐車していなかったことである。
当然、中には人がいる気配はまったくない。見知らぬ場所といえど、周囲には古びた様子はなく、今いるこの立体駐車場は廃棄された所でないことが分かる。
「はぁ〜、やっぱりなにかのいたずら―――」
一瞬だけ不安が過るが、ただの偶然だと思いやるせない気持ちでボヤいた矢先―――
「―――真堂李玖くんだね」
「!」
さっきまで人の気配すら感じなかった駐車場だったが、突然真堂の真後ろに聞こえた一人の男の声よって状況は一変した。
そして訪ねてきた声の主を見る為に、真堂は瞬時に後ろを振り向く。