「もういちど聞くけど、真堂李玖くんだね」
真後ろに声をかけてきた男は再び真堂に訪ねた。男の見た目は30代前半で、顔つきは女性にも似た色白な肌をしている。まるでどこかの女形の歌舞伎俳優のようにも似ていた。
「なっ……! なんなんですかいったい、いきなりこんなもの送り付けて!」
真堂は驚きを隠せない状態で、携帯電話の画面に映っている男が送り付けてきたメールを見せ付ける。
「ああすまない。三つの内、二つはいささか冗談が過ぎたようだ」
男は愛想を振りまくような笑みで、真堂を安心させようとした。
「僕の名前はジョニー、ジョニー・蓮=マーキスだ。ジョニーと呼んでくれ」
「じゃあ……ジョニーさん。あなたが今日送ったこのメール内容は本当なんですか」
男はジョニー・蓮=マーキスと名乗った後、真堂は本題に切り替えようとした。
「ああ本当だ……。君は911についてどこまで知っているんだい」
「え?」
穏やかな口調で質問するジョニー。一方で真堂は困った表情を浮かばせた。
「それは……、犯人がイスラム原理主義のアルカイーダ。その首領がウサマ=ビンラディンが引き起こした主犯だとか―――」
「基本はそうだろうね……」
「きほん?」
「ああ基本911は、21世紀初頭に起こった最大のテロという事になっているが、これは表側の公表に過ぎない。実際にテロが起こった後として一番に浮かぶ思想は一つ『陰謀説』だ。君はこの陰謀説を信じているかい」
「……あんまり信じていませんけど……それがメールと陰謀説どう関係がるんですか?」
「それは……、911は実際に陰謀があったからこそ起きた事件だからだ」
「な……!」
ジョニーが告げた驚愕の真実に、真堂は911光景を脳裏に浮かび上がせたことで、とてつもない恐怖と悪寒を覚えた。
「じゃあ、あの事件は最初から仕組まれた事だったんですか」
「……そうだ……」
その言葉を聞いた真堂は心の中に大きな憎しみを芽生えさせる以前に、自分に言い聞かせるように感情を抑え込んだ。
「そんな……ことが……」
「落ち着きなさい。それによく考えてもみろ、アメリカは新世紀に入る以前は、一度も他国から国土を犯されたことがない列記とした超大国だ。そのアメリカが、飛行機の特攻なんて簡単に許すと思うのかい」
「でも人質が取られていたし―――」
「あの事件はアメリカ市民にテロの驚異を知らしめる為の粛正に過ぎなかったんだ。単に有り得ないことが有り得た、ただそれだけのことなんだから」
ジョニーは無理にでも現実を分からせようと、真堂に真実を知らしめる。
「いったい……誰が……そんなこと……」
真堂は無知な自分を呪うかのように、ジョニーに何度も苦虫を放り込まれた様子で再び理由を聞く。
「僕が知っている限り、ある組織がテロリストに手引きした事が分かった」
「組織……?」
不意にいったその言葉に、真堂はある漢字二文字のキーワードに食付いた。
「そう、その組織は何百年もの間、歴史の裏に関わってきた組織だ」
「まさか……フリーメイソンとか言いませんよね……」
「いや、正確にはフリーメイソンと長く対立している組織。伝統には差があるが、同じ力、同じネットワークを形成していた強力な組織だ」
「第二のフリーメイソンのようなものですか?」
「まあ、そうともいうな。実はある人物からの命令で、僕は君達家族を監視していたんだ」
「えっ!」
ジョニーの突然の告白に真堂はどう応じようか戸惑った。
「監視って、どうして……というか……ある人物って!」
「君達家族の一人に精通した人物だ。とにかく僕はその人物にもう一つ頼まれたことがあってね。君をこの町から出すように言われたんだ。これを機に僕といっしょにこの町から出てくれ、もちろん家族いっしょだ」
「そんな突然言われても……!」
「今来れば君の知りたい事はなんでも手に入る。さあ、奴らに見つかる前に―――」
「ちょっと待って、やつらって?」
「それは―――」
それは一瞬の出来事だった―――