石川は昨日の911の件について聞いて帰宅してから、真堂の過去を知ったことによって、これからどう接するのかを考える内にとんでもない罪悪感に溺れ始め、それから一睡もできずに明日を迎えたのだ。
「はぁ〜、なんで言うかな〜」
獅郎は石川にいったことを全て話し、真堂は思わずため息が漏れる。
「すまん……」
「うぅ……」
「……あのね石川さん―――」
いずればれると知っていてもこれ以上、他の人にばれるのは避けたいと感じた真堂は、今にも泣きそうな石川に911の件についてどれくらい知っているのかを聞いた。
「―――そっかぁ……杉山先生が……」
ことの真相を知った真堂。昨日の杉山が911の件について話していた事を思い出す。
「……まあ、石川さんの口の固さを見抜いてたからこそ言ったと思うけど……、先生……最終的に、石川さんが罪悪感に溺れることは予想はできなかったのだろうか……?」
真堂は渋い顔で自らの心の疑問を石川と獅郎の二人の前で述べた。
「あの……別に悪気があって聞いたんじゃなくてね―――」
「その辺はもう分かったからいいよ」
「ええっ、でも!」
みなまで言うなと、いわんばかりの様子で真堂は石川の質問をはぶく。
「たとえ……911の事を知ったとしても、俺は咎める気はないよ」
「え?」
自らの慈悲を表したような笑みを浮かべながら、真堂は倒れ込むような体制の石川に手を差しのべる。
「どうせ知られるのも時間の問題だし、なにより知ったところでそんなに罪悪感で落ち込む事ないよ」
「李玖……くん」
その手を差しのべられた時、屋上から優しく吹き込んだ風が、まるで心の芯まで当たるかのように、石川の中に宿ってた罪悪感が風と共に消え去った。
「あ……ありがとう。なんか……だいぶ楽になったかもしれない」
「それはよかった」
(なんだろう俺、かなり置いてかれたような気がする)
二人が親近感に浸ってる間、獅郎はどことない孤独感に感じ、自らの思っている疑問を心の中に呟いた。
「あっ、そういえばなにか話してなかった? たしか……なにか仕組まれたとか、瀕死がどうかとか……」
「え、なに、聞いてたの」
(急に目の色が変わった!)
真堂の鋭い眼光に思わず肝が冷やす石川。
「はぁ〜……」
「あの〜……」
911の次に真堂の秘密がばれたのはこれで二つ目となった。石川が戸惑っている中、また面倒な事になったと思わずため息を吐いた真堂。
「まあ……いいか」
「話していいのか?」
間が開いたところでやっと口を開いた獅郎は、真堂に昨日の出来事について石川に話すかどうか相談した。
「信じてくれないよりかはましだからさ」
「?」
「石川さん実は―――」