小説『ラグナロクゼロ(シーズン1〜2)』
作者:デニス()

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第一章 黄昏の瞳を持つ少年と長髪の均衡者


序章 その時少年は神の声を聞いた

「―――はぁ……空……か」

学校の昼休み。一人屋上で漠然とため息をつきながら、空を見つめている少年がいた。
少年はどこにでもいそうなショートカットの幼気な中学生には変わりなく、なぜか寝ぼけた顔で空を見つめている。
気晴らしに空を見ているのではなく、しばらく風に当たって昼寝をしたいからでもない。
ただ空を見た事で、少年の脳裏に浮かぶのは、過去の惨劇によって一瞬で廃墟と化した景色と、後に聞こえてくる多くの断末魔の叫び声だった―――。

2001年9月11日―――。四機の旅客機がハイジャックされ、二機がニューヨークの世界貿易センタービルの二つの建物に相次いで激突し、ビルは炎上・倒壊した。
また別の一機は、ワシントン郊外の国防総省に突っ込み、残りの一機がピッツバーグ近郊に墜落した。
後にこの事件は、『アメリカ同時多発テロ・911』と呼ばれた。
世界貿易センタービルの崩壊によって大勢の人間の命が失われた日である。それと同時に、それを目の前で目撃したひとりの少年の人生をも変えた。
少年の名は『真堂李玖(しんどう・りく)』。父親を『911』で亡くして、今はその父親が入っていた政府の補償基金・保険金を頼りに生活している。
そんな重い過去を抱えながら、『真堂李玖』は今まで当たり前のように見ていた空をあまり見ようとはしない。
空を見たら、またあの惨劇がおこるのではないかと、心のどこかで思ってしまうのであった。
父親が亡なった事で『真堂李玖』の母親・『真堂優子』は鬱にかかり完治するまであまりまともに生活できないとされている。
姉と兄、自分を入れて三人で暮らしていたが、姉・真堂智美(しんどう・さとみ)は大学卒業後アメリカでジャーナリストの仕事をする為、出稼ぎに行ってしまう。
今は家族で頼れるのは兄である真堂陽一(しんどう・よういち)だけだった。
 その当時、倒壊したビルの機材に有害物質による、健康被害の影響が懸念されていたが、父を除く家族全員、人体に異常はなかった。

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