小説『ラグナロクゼロ(シーズン1〜2)』
作者:デニス()

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2004年5月27日―――真堂李玖、十四歳。
あれから一ヶ月。真堂は心も落ち着いたところで、学校に顔を出せるようになり、友人達に見守れるなか、少しずつ兄を亡くした悲しみから吹っ切れようとしていた。
だがそれもつかの間、真堂は新たなる問題に直面していた。
その問題とは―――

「ねえねえ、李玖くん知ってる?」

一年三組の教室に唐突な具合で真堂にあること尋ねる石川。

「「知ってる」って、なにが?」
真堂は石川の質問に尋ね返した。

「李玖くんが帰り道に通っている駄菓子屋さんあるでしょ。そこの近くにある、教会の『イエス・キリストのブロンズ像』が誰かに壊されたらしいんだって」

「うっ……」

真堂はギクリと石川から横にある窓から視線を移し、冷や汗をかきながら話しを聞こうとする。

「噂では、どっかの『異端者』がやったんじゃないかって話だよ、李玖くんなにか知らない?」

石川は興味本意で真堂に尋ねる。

「へ……へ〜そうなんだ。知らないなあ……」

「……どうした李玖くん? 顔が優れないようだけど」

「んん……い、いや別に」

真堂が抱えている新たなる問題それは、ちょうど石川が話していたのと関係していた。

―――一ヶ月前。あれからイエス・キリストのブロンズ像に入っていた『謎の青年』を、どこかの病院か警察に引き渡そうか考えていたが、仮に連れていったとしてもどう説明したらいいのか分からずに考えた結果、しばらく自分の家に置いていこうと真堂は決めた。真堂は青年を担ぎ込み、見た目と違って以外と軽かったことに、あまり手間をかけずに家まで運ぶことができた。

それから今に至り現在は亡き兄の部屋で『青年』は眠っている。
 その時に壊れた『イエス・キリストのブロンズ像』をそのままにしといた事で、今の現状が存在し、同時に気まずく感じている真堂だった。

(言えない……。あの『ブロンズ像』が壊れた原因が、中に人間が入っていたからなんて……)

「具合が悪かったら保健室いったほうがいいんじゃない。よかったら私も一緒に行ってあげようか?」

「いや本当に大丈夫だから、本当に……」

「そう?」

この気まずさをなんとか脱しようと、真堂はあることを次に変える話題を思い出し、すぐにその話題に切り替えようとした。

「そうだ石川さん、これ前に貸してくれた漫画なんだけど」

真堂は自分のカバンに手を伸ばし、中に入っていたある漫画を取り出した。

「ああ、それ」

その漫画がとは『月刊エレメンタル』で、連載中の人気漫画・『閃光の騎士シェザード』というタイトルの単行本の一巻だった。

「どう、面白かった!」

石川はその漫画に好意的な言葉で、真堂に感想を聞こうとする。

「特に面白かったのはシェザードが、最初に傭兵として入った小さな国のトレース共和国って国を勝利に導いた事かな」

「ああ、トレース共和国とマウント公国の戦争で、シェザードが活躍した戦闘の山岳夜戦戦闘戦」

「そうそう、シェザードがマウント公国軍の囮作戦に気付いて、トレース共和国の首都の近くにある山岳地帯にマウント公国軍の予備兵力やく一○○○人とシェザード率いるわずか三百人の傭兵団体との一騎打ちした戦闘が一番印象に残ったね」

「その戦闘の戦略として使った光魔法と山岳地帯の地形に詳しい先住民族と手を組んで、少ない兵力の分、戦略で埋めたところが一番しびれたよね」

「うんうん、そうだね」

予想以上に話しが弾んだことに、真堂はそのまま話を進めて、帰りのHRまでに持ち込ませようとする。
しかしこの閃光の騎士シェザードという作品の話の弾みようによっては、石川岬の作品えの好意的なことに、かなりのファンだと真堂は理解した。

この『閃光の騎士シェザード』という作品の内容はこうだ―――カルマという世界に存在する一つの小さな国・独立騎士領ローレシア(諸外国の言われてる名称は軍国・騎国)とよばれる小領大国(北海道規模)に在住するローレシアの四大騎士の一つ、グローリー家の若き令息。シェザー・ランド=グローリーまたの名を閃光の騎士シェザードというもう一つの名を持つ騎士がいた。彼は幾多の戦争から活躍し、ローレシアを数々の危機から救った騎士である。そんな人生もつかの間、超大国アトラス帝国との戦争でシェザードが率いる一個旅団が壊滅しシェザード一人が生き残ってしまい、たった一回の敗北によって国を追放され、いつしか彼は虚栄の騎士という異名をつけられた。これを気にシェザードの人生は堕落し始めた。しかし、ある謎の美少女リサ=エリルハートの出会いがきっかけで再び栄光を取り戻すために旅をする物語―――という内容で現在、月刊エレメンタルで大人気連載中の原作者・ささたくやタッキーが描く人気漫画作品だという(単行本1〜9巻まで発売中)。

「ほーら、おまえら席に着け! HR始めるぞう」

そんな漫画の話も終わり、教室に入ってきた杉山薫の一声で帰りのHRが始まった。

「ああ、もうHRか……ごめんね、李玖くん。その話しまた後で」

「うん、わかった」

真堂は借りていた漫画を石川に手渡し、今はHRに集中しようとする。

「今日は転校生を紹介する。入っていいぞ」

杉山が声をかけると、教室に入ってきたのは栗色の髪で目が座っている美少年だった。少年は黒板に自分の名前をチョークで書き、自ら自己紹介した。

「『京楽中学校』から転校して来ました。神崎洵です。学校にはまだ馴染めていませんが、みなさんと仲良くなれるようにがんばりたいと思います」

爽やかな挨拶で、教室内のクラスを神崎が持つ親近感を湧かせるような笑みで、まるで女性でも口説くかの如く、神崎はクラス内(男子含め)の好感度を一気に上げた。

(へ〜以外と馴染みやすそうな人だなあ)

(気に入らねえ……)

真堂は神崎を見た目で判断し、それに比べて獅郎はなぜかイケスかない顔をしながら、まるで威嚇するかのように転校生を見る。

(なんだろう獅郎くん、なんかやな事でもあったのかなあ?)

獅郎の様子に気付いて、心の中で気を使うかのように心配する石川。
転校生は自己紹介を終えた後、教室の一番前の左側に座った。

「どうも、よろしくね」

「ああ……よろしく……」

偶然座った席が石川と相席だった為に、神崎は隣の席に挨拶したところ、相席の人が対応に間に合わずに遅れてその相手に挨拶をした。

(石川さんと相席か……、それとイケメンと隣)

石川が神崎と隣りになって幸運だと真堂は勝手な思い込みをする。

(うぅ……みんなの視線が痛く感じるのは気のせいだろうか……)

実際に神崎が隣に座った事で、教室内の女子達全員の視線が石川に痛く突いた。

「はーい、じゃあ明日の保険の授業は小テストやるから、おまえら覚悟しとけよう―――」

(……ん?)

教室内に杉山からブーイングが降り注ぐなか、真堂はあることに気付いた。それは、神崎が真堂に視線を向けていることからだった。

(なんだろう……)

しばらく目線を会わしていると、神崎は交流を深める人物を決めたかのように、真堂に手を振った。

(……変な人……)

真堂は神崎から目を反らし、杉山が明日だす小テストの詳細についての話しに集中し始め、それを聞いた後HRは終わり放課後を迎えるのであった。

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