真堂の反応を楽しんでいる途中、神崎は後ろから肩を人差し指でトントンと叩かれ、その叩いた人物の方向を振り向いたその瞬間。突然、神崎の片方の頬に衝撃が走った―――殴られたのである。
「痛っ!」
神崎は殴られた衝撃で、一年三組のと違う隣の下駄箱に倒れ伏せるように飛ばされ、右頬と後頭部にかなりのダメージをうけた。
「痛ってーな……いったいなに―――」
「うせろ……」
「し、獅郎!」
神崎を突然殴った本人が獅郎だと分かったことで、真堂はちょっとした安心感を覚える。
「ん、獅郎? ああ……崇妻獅郎だっけ? 挨拶にしては積極的すぎないかい……」
起き上がった神崎はひるまず余裕を見せた表情で、獅郎に挑戦的な態度をとる。
「うせろって言ってるだろ……!」
「なになに、『白馬の王子様』気取りぃ〜―――うぐっ!」
挑戦的な態度をとったものの、獅郎に強い力で制服の襟首を掴まれたと同時に、神崎の首と共にしめ上げられる。
「がっ……! ちょっと……苦しいんだけど……」
神崎はさっきから見せつけていた余裕の表情は崩れ欠けていたが、少しニヤけた顔で余裕を保とうとする。
「三度も言わせるな、つぎ変なこと吹き込もうとしたら顔だけじゃねえ、てめえの鼻の骨折るぞ……」
獅郎は神崎から顔を近づき強引に目線を合わせ、次に攻撃する箇所を宣告した後、投げ飛ばすかのように掴んでいた襟首を離した。
「あだっ! いたた……ヘイヘイわかりましたよ」
獅郎の恐喝から解放された神崎は再び余裕な表情を取り戻し、真堂に視線を向けて次に問うた。
「まっ、あまりにもストレート言い過ぎた俺も悪かったけどさあ、殴ることは無いんじゃない」
「ほっほう、そんなに殺されたいか……」
「ぐっ……ふふ……ニー」
「?」
指の間接をパキポキと鳴らす獅郎に神崎は少し後退りし、ニコやかな表情で手の形をピースに変え、二人に見せつけた。
「な……なにを」
さっきまで口を閉ざしていた真堂はやっと口を開いた。
「なかなかやるねぇ……でも次に学校で会う時は、できればもうちょっと平和的に話そうよ。じゃねっ!」
あまりにも勝手な発言にキョトンした二人は、そのまま黙って神崎の帰りを見送った。
「結局……なんだったたんだ? あいつ……」
「さあ……」
神崎が帰った後、真堂はまた新たなる謎を抱え込んだ。なぜ入りたての転校生が真堂の911の被害者だと知っているのか、それはとても偶然とは思えない、なにか仕組まれような運命の付け合わせに、真堂は知ることは叶わずに帰宅するのであった。