小説『ラグナロクゼロ(シーズン1〜2)』
作者:デニス()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

「いやー、美味かったー!」

(機嫌治るの早!)

陽気な掛け声で通る帰り道。真堂は源六の杏仁豆腐を食べたおかげですっかり機嫌も治り、神崎は思わず心の中でツッコミを呟くほどその意外性に驚いていた。

「満足した」

「うん満足、満足」

ご機嫌斜めにスキップしながら道を歩き、真堂は今感じている満足感を態度で表す。

「ああ……そう……」

神崎は真堂のその態度に少し引き気味で応じる。

「いやー、ごちそうさまでした。ホントに」

「あはは……ん? そういえばここ」

「んー? うっ!」

神崎の視線に向けている方に真堂も同じ方向を見てみると、知らない内にまたあの教会に行き着いていたことに気付いた。しかも換気目的で開いている扉をよく見ると、半壊した『イエス・キリスト像』が見えた。

「あれ? あの壊れているのって、噂に聞いていた例の異端者にやられたって言う、ブロンズ像じゃない?」

「あ、ああ……そ、そうだね」

真堂は顔をひきつらせながら神崎の質問に応じた。

「ん?」

真堂の声が若干震えていることに気付いた神崎は、少しだけ不思議に思えてきた。

(適当に帰ると、いつもあの教会に行き着くんだよな〜……、腐れ縁というかなんというか……)

「どした?」

教会の中にある半壊したイエス・キリストのブロンズ像を見た瞬間、急に陽気な気分から陰気な気分えと変わった真堂。まさかあれがたぶん自分のせいで壊れたなんて、口が裂けても言えず、真堂はなんとかこの場を脱すればいいのか考えた。

「………」

「なんか……面白そうだから入ってみようかなあ」

「いやいやいや!」

事件後という強い好奇心に刺激を与えたのか、教会に入ろうとする神崎を真堂は止めようとする。

「―――なんだよ、ちょっとくらいいいだろ」

「いやいや! え〜と……あっそうだ!」

「?」

「ここの近くに駄菓子屋さんがあってさ、今日ラーメンおごってくれたお礼にアイスおごってあげるよ!」

「え……? いいよ別に」

「いいからいいから」

「ちょっ、おい!」

真堂は教会に入る神崎を阻止する為に無理矢理でも駄菓子屋に連れて行こうした。

五分後。

「かー! ラムネ最っ高ー!」

結局、駄菓子屋に連れてかれた神崎は片手に『ガ○ガリ君(ソーダ味)』を持ち、一人だけテンションが高い真堂のラムネの飲みっぷりはまるで、サラリーマンが仕事を終えた後のビールを飲んだかのようだった。

「お……おお……そうだな」

神崎は一人だけ妙な気持ちでアイスを食べながら、真堂の陽気な姿を見る。

「……なあ真堂くん―――」

「季玖でいいよ神崎さん」

「じゃあ俺も神崎でいいよ、質問があるんだけど季玖の父ちゃんって死ぬ前にどんな仕事してたの?」

「え?」

ヤブから棒に聞いてきた神崎に、意外に感じた真堂は言うか言わないかを迷い始めた。

「………」

「なんだよ? そんなに難しい質問じゃないだろ」

真堂が迷っている理由は、神崎に対する不信感がまだ消えていないことからあった。その為、さっきまで真堂はただうやむやに本音をいっていたわけではなく、ちゃんと言動に注意して喋っていたからチョッかいをだされなかったものの、神崎にあまり信頼と言えるものはなかったのである。

(やっぱり、飯で釣っても信頼は得られないか……)

真堂は神崎に対して信用の『し』の字も受け入れていないことを悟り、一方的に話した自分に反省しながらやむなく質問を変える。

「………」

「ああ……じゃあこうしよう君が俺になにか質問してきなよ。そしたら俺が質問して君が答える。どう?」

「……まあ、それなら良いけど」

真堂は渋々神崎の条件に応じた。

「よし決まり! それじゃあなにか質問してきなよ。なんでも答えるからさ」

自信満々に言う神崎に真堂はとりあえず、ここは答えられない選でいこうと考える。
その神崎の答えられなさそうな質問とは―――

「神崎の『初体験』の相手って誰?」

-38-
Copyright ©デニス All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える