「すいませんでした!」
土下座であった。
「えーっ! なに? なに?」
突然の事だったことで真堂はどう対応していいのか分からず、慌てて神崎の方へ駆けつけ、頭を上げさせるように行動に移そうとする。
「と、とにかく頭を上げて!」
「い、いや……その……」
頭を上げた神崎の顔立ちは、まるで照れてるかのように顔が赤らみていた。それもそのはず、神崎は憧れていた人の息子を無礼講な状態だったとはいえ、初対面であんな人に聞かれたくない事をしてしまったのだから―――それで神崎は真堂にやった無礼を申し訳ない気持ちでどうを償うのか、それだけを考えていた。
「俺……、知らなかったとはいえ初対面で、あんな事しちまったからその……」
今頃になって自分のやった事を悔やみ始めた神崎は、少し青ざめた表情で真堂を直視できず、心の中は罪悪感でいっぱいであった。
「いや……いいよそんな、過ぎた事だし……」
「ホントに?」
「うん、ホント」
「ハァ〜……よかったぁ……」
神崎はさっきまで立っていたはずが、慈悲をもらった罪人のように安堵の息を漏らし、それと同時に神崎はまるでゆっくりと空気が抜けた風船のように座り込む。
(本当に父さんの作品が好きなんだな)
「いやーごめんな。俺マイペースなところあるから……、前にあんな軽はずみなこと聞いちゃうから……」
「いいよ、気にしてないから」
少しずつ陽気さを取り戻し始めてきた神崎は、改めて謝罪を申し出たところ、これくらい反省してるんだったらもう許してもいいだろう、と思った真堂はその謝罪を優しく受け入れた。
「よかったー本当によかった」
「それに……」
「それに?」
「こんな目の前に父さんの熱狂的なファンがいると、俺も息子として鼻が高いよ」
「そうかそうか!」
さっきまで仲が悪かった二人だが『創一』の話しですっかり仲が良くなり、今頃になって真堂は自分の父の事を少し誇りに思うように感じた。
「アッハハハ……ハァ……」
「……ん?」
神崎がなにやら真堂の目の前に握手を求めるかのように、手を差し延べる。
「今頃なんだけどさ……、友達になってください!」
「ええ! ……うん、いいよ別に」
真堂はなんのまえぶれもなく神崎の頼みを承知した。
「マジで! では改めて、神崎洵です」
「真堂李玖。よろしく」
「こちらこそよろしく」
なんだかんだいいながら、この神崎という少年は調子に乗りやすいところは難点だが、根は良い奴なのだと過大評価し真堂は彼の事を見直した。
「―――いやべっ! もうこんな時間かよ。すまん李玖、野暮用を思い出したから今日はここまでだ。またなっ!」
二人は握手を交した後に時刻は7時を回った時、駄菓子屋に置いてある時計を見て用事を思い出した神崎は、真堂に別れの挨拶をして大急ぎで家に帰った。
「ああ、行っちゃった……。野暮用ってなんなんだろう?」
パチパチパチ
「?」
突然、振動の後ろから拍手が聞こえ、音が聞こえた方に振り向くと―――