「いやー、さっきまで仲が悪かった二人の間に新しい友情が生まれた。なんと微笑ましい事でしょう……」
「獅郎……思ってもいないことを口に出しながら真顔で棒読みすんのやめてくんない。すごい違和感あるから!」
「誠にめでたい……」
真堂の訴えは効かず皮肉をこぼすかのように、崇妻獅郎は台詞の棒読みを続ける。
「もしかして……勝手に仲良くなったの、怒ってんの?」
「べっつにー……」
神崎と仲良くなった事になにか関係しているのか、それを獅郎に問うと隠す気もないクセに下手な返答のしかたをする。
(ああこれは怒っているな)
「……俺は認めねえからな」
「え?」
獅郎はふざけた振る舞いから真剣な眼差しえと切り替え、真堂に神崎自体を否定するように言った。
「すぐに仲良くなったみたいだけど、お前は人が良すぎるからなぁ〜……またなにか変な質問されるのが落ちだと思うけど―――」
「獅郎。どこまで見てたの?」
「ん〜……あいつが土下座するところまで」
「そう……認めないって言ってたけど、一体神崎のどこが気に入らないって言うの?」
「神崎か、もうそんな名前で呼べる仲になったのか……」
獅郎はため息が混ざった声で、真堂を呆れたような目で見る。
「早く」
「そうだなぁ……、俺にとって気に入らないところはまずあのニヤけた顔つきと人を見下したような目だな」
獅郎はただでさえ口数が少ない人間なのに、神崎の事でこれだけ口数が多いとかなり嫌っていることが分かる。
「そ……そう、悪かったよ勝手に話して、でも……そんなに悪いやつじゃないからさあ―――」
「それでも俺は認めん」
「アハハ……ハァ〜」
獅郎と話し合った結果。どうやら神崎と獅郎の関係は動物で言う『犬猿の仲』になりそうだと、真堂は予測したと同時にため息を吐いた。
ぐぅ〜
「腹減った。なんか食わせろ」
「唐突だなあ……いいよ、家の冷蔵庫の中にあまりもんしかないけど。それでいいなら料理ごちそうするけど」
「あまりものか……、わかったそれでいい」
渋々応じる獅郎。
手料理をごちそうする為に真堂は獅郎を自分の家に招くのであった。