小説『ラグナロクゼロ(シーズン1〜2)』
作者:デニス()

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6月5日。土曜日。
あれから5日が起った。ある日、一人の少年が平日から貯めていた自宅の家事をこなしていた。

「―――真堂さん洗濯物をたたむの終わりました。次は何をやればいいですか」

「わかりました名無しさん。次はエアコンのフィルターを浴室で洗っといてください」

まず休みの日に今やっている家事は食器洗いをしていた真堂李玖は、現在居候中で記憶喪失の謎の青年・名無しに次の仕事を頼んだ。
5日前。兄の部屋に居た『謎の青年』が、一ヶ月半の眠りからやっと覚めたのはよかった。だが、記憶喪失で自分の名前すら思い出せない常態で目覚めてしまい、困った真堂はその場にいた獅郎に尋問めいた事をさせたが、『謎の青年』は名前や出身地やなぜあの教会の『イエス・キリストのブロンズ像』の中に入っていたのか聞いたところ、結局「知らない」の一点張りでなにも聞き出すことができなかった。そんなこんなでこの青年をどうするのか二人で検討してみた結果。期待はないが、人並みの生活をしてみれば記憶を少しつづ思い出していくのではないのか、そう考えた真堂はしばらく家で居させることになり、名前がないと不便なので『名無し』という名を付けた。
そして「働かないもの喰うべからず」と言うことで、とりあえず家の手伝いをさして、記憶を取り戻す経過をまちながら今に至るのであった。

「真堂さん」

「はい?」

「フィルターって何ですか?」

「は……い?」

名無しは人並みに生活できるくらいの記憶は持ち合わせているが、まれに世間知らずな面が見られる時があり、掃除の指示を出す真堂は少し苦労をしていた。

「フィルターっていうのは、ここのフタをとって―――ほらっ、この黒い網状の物がそうです」

「ああ、なるほどわかりました」

名無しはフィルターを理解したところで、すぐに浴室に直行した。

「はぁー……もう5日か」

真堂はため息を吐きながら名無しが目覚めてから、何日経過したかを確認したかを呟いた。

「いつになったら記憶が戻るんだろう……」

呆れた表情で名無しが早く記憶が戻るのを祈るばかりだが、真堂は彼に家に居させるだけではなく、他になにができるのであろうか、そう考えていくよりもまず家事を終らしてからゆっくり考えようと再び食器洗いを再開した。

ドンドンッ!

「ん?」

インターホン鳴らさずに、家のドアを拳で叩く音が真堂のいる食卓にまで響いた。

「なんだろう?」

「ちょっと、誰もいないの〜!」

「ん? この声は!」

ドアの向こうから聞こえてきた声に、憶えがあった真堂はすぐに玄関に駆け寄りドアを開けると―――

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