「こ、これは……」
真堂が見た悪臭の正体は、さっき盲目の悪魔の呪縛から解き放ったホームレスの死体だった。
「そ、そんな……解放した時にはこんな臭いしなかったのに」
死体はすでに腐敗の進行が早く、蠅(はえ)が周囲にたかっているのがその証拠だった。
「あ……ぐっ、うおえぇー」
その死体と悪臭のせいで嘔吐して倒れ込んでしまった真堂は、思いもよらない出来事にちょっとした混乱常態に陥った。
「あ……ああ、あ……」
強力な悪臭のせいで体が麻痺しかけた手で、真堂はポケットの中に入っている携帯を取り出し110番に通報する。
『プルルル、プルルル―――はい、こちら神奈川県警』
「あぁ……、もしも……し、警察ですか……」
『はい』
「死体が……今、目の前に死体あってすぐに来てください。場所は……あ……―――」
『もしもし? どうしましたか、もしもし?』
今いる場所を言う前に突然急激な疲労に襲われ、悪臭のせいもあって倒れ込んだ真堂は、話しの途中で携帯を離したことで、妙だと思った警察は連絡された位置を特定してすぐに人を送らせた。
30分後
「な、なんだこれは……おい誰か救急車呼べ!」
特定した場所にいたのはホームレスの死体と発見したと思われる少年(真堂)を見つけ、警察管が驚くのは無理はなかった。その後、気を失っていた真堂はそのまま救急車で近くの病院に運ばれ、死体となって発見されたホームレスは検収の結果『孤独死』と断定されたが一つだけ不可解な点があった。それは死亡推定時刻が何ヶ月か前だというのに、遺体の腐り方がどうもその死亡した時と合わない事と、体内(特に血中)に多量の『硫黄』が検出され、一番の特異な謎を残してからこの件はそのまま孤独死ということで処理された。