小説『ラグナロクゼロ(シーズン1〜2)』
作者:デニス()

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同日。同時刻。夜。厚木海軍飛行場。

「ん〜、ここが日本かぁ」

「はい、ディオ様」

今の現地は第二次世界大戦で連合国の最後の敵・大日本帝国が降伏した後に、この国を共和制に色濃く導入させた有名なアメリカの名将・『ダグラス=マッカーサー』が、初めてこの国で来日した時に最初に足を踏み入れた基地である。そこを出てのびのびとした後、やっと旅の目的地に着いた観賞に浸っている男装をした白髪で、独特の美貌を放つオカッパの少女・ディオラウス=マーロウと主人に返答する同じ特徴を持ったショートカットをしたその従者アシュレイ(苗字はない)。

「気づけばもう夜……」

二人はある組織の命令でこの国・『日本』にたどり着き、今から次の目的地に向かおうとするが、実は予定では昼に着くはずが出発した時に現場(アメリカ)の整備ミスによって、飛行時間が繰り上げられ夜に着いてしまったのであった。

「予定より遅く着いてしまいましたが、次の目的地まで近くのホテルにチェックインをして明日にでも向かいますか?」

「そうだね……、そういえば次の目的地ってどこだっけ?」

長い飛行時間ですっかり次の目的地を忘れてしまったディオラウスは、アシュレイに退屈そうに聞いた。

「はい、ディオ様。『矢島組』組長・矢島哲斎様のご自宅です」

「そうか……その人の役職は?」

組織から命ぜられた任務の詳細は全てアシュレイによって一任されているため、ディオラウスはその詳細の二割しか知らなかった。

「はい、『ヤクザ』というものです。ディオ様」

なんのためらいもなくまっとうに返答するアシュレイ。

「ヤクザ……、そうか『ジャパニーズマフィア』か」

「向こうの呼称ではそうでしょうね」

「ん? でもそこってうちの下部組織じゃないよね? なんでよりによってここのマフィアなんかに会いに行く必要があるの? アジアの情報網なら『冷戦時代』に嫌ってほど張り巡らしているくせに」

あまり詳細の知らないディオラウスは、アシュレイにまるで無知な子供ような質問をする。

「組織が掴んだ情報だと、例の因縁のある組織の裏切り者に繋がりがあると、組織は断定していますが」

「ふ〜ん。なに? サカヅキを交した仲とでも言うの?」

「そうとも言うでしょうね。それと―――」

「なに?」

「ここ神奈川で、強力な『アイオン』と『アルコン』の反応が感知されたとの事なので、矢島組の件が終わり次第調査しろとの御命令です」

「え〜、面倒くさ〜い」

ディオラウスは大人びた女性のような見た目をしているが、中身は純真無垢な子供そのもので、物事に縛られるのを嫌い、世間知らずで目新しいものに興味を抱き、とにかく面白いものを好み、こういった仕事系のものは労働意欲というものを持たずいた。ただなにか興味があるのを持たない限り行動は起こさない。そういう人物なのであった。

「まあ、そう言わずにこれはスティークス様の直直の御命令なんですから」

「おじいさまが? う〜ん……わかったよ。ところでその強い反応があったていう『アイオン』と『アルコン』の量はどのくらいなの?」

「はい、4月23日に観測された『アイオン』は80%、同じく『アルコン』は40%です。ディオ様」

「アイオンが80以上! アシュレイそれって―――」

「お察しのとおり、ここ日本で初めて『聖餐者(せいさんしゃ)』の存在の確定がとれたのです」

アシュレイはディオラウスの反応を悟り先に答え、それを聞いた後で彼女は自らの叔父のじきじきの命令だと知り、十分な納得が得られた。

「なるほど、どうりでおじいさまから命令がでるはずだわ」

「私達は『あの部隊』と違って、スティークス様から独自に編成なされた独立した部隊ですから」

「といっても僕を入れて二人しかいないけどね」

ディオラウスは皮肉を言っているかのように返答した。

「はい……」

「まあいいや、とりあえず適当なホテルに泊まって明日を待とうか」

「はい、ディオ様」

ディオラウスは今後の予定を決めた後、二人は近くの居心地のいいホテルを捜索しようとやっと歩き出した。

「う〜ん」

その時、ディオラウスが歩いている途中に、腕を組ながらなにかを考えていた。

「どうかなさいましたかディオ様。ホテルの方でしたら『夜伽』をする時間までには間に合わせますので」

「いや、そうじゃないんだよアシュレイ。帰る時におじいさまからのお土産はなににしようか考えてたんだよ」

「お土産でしたら『寿司(すし)』という物はいかがでしょうか」

「スシ?」

「手の中心に収まるくらいの握った米の上に、生魚の切り身を乗せた日本の伝統料理です」

「へー、ずいぶんサバイバルな国なんだねここは」

ディオラウスは加熱調理したものしか口にしたことがない為、いささか魚を生で食べるというのは気がひけるが、忠実なる従者がそういうのなら正しいのだろうと、彼女はそれに従った。

「スティークス様はかなりのご高齢なので、そういう健康的なお土産の方がいいでしょうね」

「そういうものかね……」

しばらく歩いてると二人りは居心地のよさそうなホテルに行き着き、そこに宿泊して明日に備え旅の疲れを癒そうとした。
そして、ディオラウスとアシュレイ。この二人が少年達にとって初めての障害になることは、また先の話しになるのであった。

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