「なっ! なんだこの崖」
その圧倒的な大きな崖のスケールのでかさに驚いた真堂。
「ああ……あ、あのっ!」
そのまま立ち止まり、真堂は心の準備もせずにかなり緊張気味で声をかけた。
「ウフフ……」
「?」
そしてその少女は振り向くと、まるでこの世界に来た事を歓迎するかのように、満面の笑みで真堂に近づいて来る。
「こんにちは」
「え? ああ……こ、こんにちは」
突然の挨拶に戸惑う真堂。よく見ると真っ白いワンピースを着こなしていて、生き生きとした面持ちをした美形の少女だった。その為か返答するのに少し困ったようだ。
「僕はフェルメール、フェルメール=ロビンソン。あなたは?」
「し……真堂、真堂李玖」
互いに名前を教えたことで、かなり細い糸で結ばれたような絆や関係が、かすかに生まれたように感じた。真堂は男口調で話す謎の少女・『フェルメール』に、この世界について聞き出そうとしていた。
「あの……、フェルメールだっけ……俺、倒れて病院に居るはずなんだけど、なんか気がついたらこの世界に―――」
「落ちて来た」
「うんそうそう……え? なんで知ってんの!」
悟られたことに驚いた真堂は、このフェルメールという少女になにか見透かされたような気がした。
「普通にそこらへんブラブラして空みやげたら、流れ星でも落ちて来たのかと思ってよく見たら、君だってわかったんだ」
「どんだけ視力いいんだよ!」
「でも変だな……?」
「なにが?」
「この世界は、普通の人間がこれる場所じゃないんだけど」
「いや、そんなこと言われても……ん? まてよ……ここ天国なんて言わないよね」
「ん〜……、半分正解」
「半分?」
「といっても、僕もこの世界のことはよく分かんないんだけどね」
「そうなんだ……」
人を見つけたとしても、元の世界に戻れるわけではなかった。これは「夢ではないか?」という思想は落下した後に消えたが、真堂はフェルメールにこの世界に来る前の出来事を全て話し情報交換をし始めた。
「―――なるほど『悪魔』がねえ……倒してからこの世界に……」
「信じられないと思うけど―――」
「信じるよ」
「え……でも普通は何か疑うだろ」
「ううん」
フェルメールはなんの疑いもなく真堂の話しを信じた。普通だったら疑うはずなのに信じてくれたことに真堂は安心して話が進められた。
「なんで信じてくれるの?」
「そうだな……似たような経験を何度かしているからかな」
「?」