小説『ラグナロクゼロ(シーズン1〜2)』
作者:デニス()

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6月9日。水曜日。学校。教室。

「おはよう石川さん」

昨日ちょっとした昏睡から目覚めて、今は退院してすっかり良くなり朝を迎えて、最初に石川岬と挨拶を交した真堂は、この前借りた『閃光の騎士シェザード二巻』を手渡す。

「これありがとう。すごい面白かったよ」

「でしょでしょ! 内容はどうだった」

貸した本の内容は必ず聞く石川は、この作品の熱狂的なファンだということを明らかに物語っていた。

「う〜ん、そうだな―――トレース共和国の戦争が終結して、シェザードが次の職を探している時に、山岳夜襲戦闘(さんがくやしゅうせんとう)で一緒だったアルベスク=ルーブラっていう傭兵が、シェザードの才能を見込んで「傭兵集団を結成しないか」って薦められて、シェザードをリーダーとしたたった百人で編成された傭兵集団・閃光の騎士団を結成して、次の戦争で大きく活躍したことかな」

「でしょでしょ、その閃光の騎士団が最初に活躍したのが、エネルギー資源の利権を原因とした戦争で、東の大国・獅国と同じ国力を持った中東に位置するアブラハム戒教国との戦争だよね!」

「そうそう、アブラハム軍の兵は命知らずだから、特攻やおとりを使った戦術で獅軍が苦戦してたところに、獅側についたシェザード率いる閃光の騎士団が敵の大将を討ち取ったのが、とても印象に残ってるね」

「だよねだよね、アブラハム軍の戦力が8万で獅軍の戦力が7万で、数的に不利だったけど、敵の主力を獅軍に向けさせてそれをおとりとして、敵の本陣に閃光の騎士団が奇襲をかけたんだよね―――」

「話しの最中に悪いがHR始めるぞ」

「あ×2」

二人の会話の途中に入ってきたのは『杉山薫』だった。漫画について話しをしていたうちに、すっかり朝のHRの時間になっていたことに気付いた二人は、すぐさま自分達の席に戻った。

(っと、獅郎は今日も休みかな? それか……相変わらずの社長出勤か……)

「朝のHR始めるぞー、おまえら席に着けー」

後ろの席が誰もいないことを確認した後に、真堂は呆れがちな思想を浮かべながら、睡魔が訪れ欠けていても杉山の退屈なHRの内容を聞く。すると、しばらくして耳を傾けていると、杉山が生徒の一人について持ち出した話題の内容を聞いたとたん、真堂は退屈している暇がなくなり、一気に睡魔から解き放たれた。

「えー、みんなもニュースを見て知っていると思うが、今日は『矢島戒斗』は休みだ。最近物騒になっているから気を付けるように」

(矢島戒斗……? ああ、獅郎にいつも何かしら因縁着けてくる奴か……ニュースって?)

真堂は杉山が言ってたニュースとは朝のめ○ましテレビで見た『鎌倉市に位置する関東の暗黒街の帝王・矢島組組長・矢島哲斎が自宅で謎の自殺を遂げる!』というタイトルで報じられたニュースのことであった。
6月7日・月曜日に、矢島組総本山いわく矢島哲斎の自宅から複数の叫び声がしたとして、近所の住人が様子を見に行ったところ、自宅にいた組長以外の人間全員が刺殺死体として見つけられ、警察はヤクザの抗争だと断定し、処理されたとニュースではそう報じられた。特に妙な点は組長・矢島哲斎が自らの舌を噛み切っていることで、自殺として処理して警察はそこまではあまり深く関わらなかった。

(あのニュースか……、でも簡単に口で言えるほどのレベルじゃないだろうな……)

真堂は今朝に見たニュースの内容を思い出し、杉山が言ったように軽口が叩けるほどの物騒差ではないことを感じた。

「え〜、それと―――」

「大変だー!」

次の話しに移項すると杉山。すると突然遅刻してきた神崎洵が勢いよく教室の戸を開き、クラス全員の注目を集めながも、血相変えた顔で教室に入って来た。

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