小説『ラグナロクゼロ(シーズン1〜2)』
作者:デニス()

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「ここっス!」

校舎裏に着いて神崎が指差す方向には人ざかりができていた。教室を出て行った三人は大勢の人の山に突っ込んで行き、手探りで人をどかしてやっとケンカをしている場所に着いた。

「ハァ……ハァ……やっと抜けた……。し、獅郎!」

「あがつ……ん! なんであいつがこんなところにいるだ!」

疲労が定着しながらも真堂と杉山が見たところ、両者睨みあっていて獅郎とそのケンカ相手は、同じクラスメイトで警察に事情聴取を受けてるはずの『矢島戒斗(かいと)』だった。

「あー、どうも先生」

「矢島なにやってんだこんなところで! おまえ親父さんが死んだ件で、警察で事情聴取を受けてるはずだろ!」

驚きが隠せないままの杉山は、警察署にいるはずの矢島に張り上げた声で問いかける。

「いやちょいと……脱け出してきやした」

一時的に睨み合うのをやめ、杉山になぜ学校にいるのか理由を話した。

「な!」

「大丈夫ですって、ボチボチこいつと決着つけたら戻りやすんで」

そう言いながら、矢島と獅郎は再び睨み合い両者共に緊迫した空気を漂わせ、いつでも拳を振るう準備は完了した。

「う……崇妻……」

「獅郎……」

(すっげー! 目の前でマジなケンカが見れるぜ!)

杉山、真堂、神崎を合わせた三人はこの場から手を出そうとはしなかった。なぜなら両者睨み合っている最中に手出しをしたら、二人の独自のテリトリーから足を踏み入れたとして、すぐさまケンカが始まってしまい、ただ事では済まされないことを悟っていたからなのである。
ただのケンカに大げさだと思うが、二人うち一人・矢島戒斗は名の通った不良でもあるため大事になるのは間違いなく、杉山はどうにかしても二人を止めたかった。

「今度こそてめえと決着をつけっぞ『狂犬野郎』……」

「……おう」

両者睨み合っている間に距離は段々縮まり、もうすぐケンカが始まろうとしていた。
しかし、そんな状況にも関わらず獅郎は矢島と比べてとても落ち着いていた。

「じゃあ三つ数えたら開始だ。それでいいな」

「別に……」

「獅郎!」

「お前らよせ!」

緊迫した空気は最高潮に達した時、矢島が数えだした。

「1、2、3!」

三つ数え終えた後に矢島はとっさに獅郎の袖を掴み上げ、殴りかかろうとしたその瞬間―――

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