夕方。放課後。
「リックー、獅郎もいないことだし一緒に帰ろうぜー」
神崎は真堂の事を下の名前で呼ぶようになり、二人の仲は順調に良くなり始めつつあった。
「え? ああ、ほんと神出鬼没(しんしゅつきぼつ)だな……」
獅郎をいない事を確認した後に、真堂は忘れ物をしていないかチェックを終えたところで、両者共に小腹が空いていて、神崎といつもの駄菓子屋に向かおうとしていた。
「駄菓子屋でなに買う?」
「今月ピンチだからラムネかな」
廊下を歩きながら真堂は、金欠を理由に手頃な値段のラムネを買うことを神崎に宣告する。
「そうか……あんまり長くは楽しめないな……」
「ハハ……そうだね」
神崎の言葉に微笑を浮かべる真堂。
「あっそうだ、帰りに俺ん家によってかね」
「え、いいの?」
「おう、それはいいんだけどさ……、今度お前ん家にも遊びに行ってもいいかな……」
「家に? 別にいいけど」
神崎はとんだ照れ隠しにでもしているかのように、それを見て真堂は笑いながらその約束して、駄菓子屋に向かうのであった。
15分後
「いやー、学校帰りのラムネはサイコー!」
駄菓子屋に着いた二人は、さっそく買ったラムネを飲んで一息ついていた。
「未成年にとって炭酸飲料って、どことなくビールに値するよね」
「あっ、それって言えてる」
真堂が言った例えで二人は意気投し合い、互いの勉強の疲れを他愛のない話しで晴らしていた。
「アハハ……そういえばさ洵。なんで、学校で急に家に行こうなんて言ったんだ?」
「なーに、大した事はないよ。たださ、李玖の一番気になっている事を教えようかな〜と思ってね」
「気になっていること?」
相変わらずもったいぶった話し方をする神崎に、どうにかして真堂はその気になっている事を思い出そうとする。
「ホラ、俺と最初にあった時に―――」
「あっ、911!」
神崎のヒントを頼りに思い出した真堂は、今頃ながら再びわだかまりに似た謎に思いやられる。
「うぅ……」
「いやそんな目で見られてもな……」
突然の神崎の無礼講だった時の事を思い出した真堂は、苦い眼差しで見つめる。
「まあいいけどさ……それがどうかしたの?」
いつまでもそんなわだかまりを抱えていてもしょうがないことを思った真堂は、神崎に話しの本題に移るように問うた。
「いやな、俺がどうして李玖が911の被害者だとわかったか。それを教えようと思ってね」
「ああ、あれか……なんで知ってたの?」
その時の事を思い出した真堂は今頃になって気になり始めた。
「まあ焦るなって。今から俺の家に行ってそれを教えるから」
「そう……」
「ついでに俺の秘密も教えてやるよ」
「マジ」
「うん、マジ」
出会って最初の印象からして、あまりにも謎めいている点が多かった神崎は、友として本当の自分を知ってもらう為に、自らの秘密を教える事で真堂との信頼関係を築こうとしていた。
(信頼の証のつもりなのか……? まあ人の心の声を聞くより、よっぽどいいかもしれないな……)
それに対し真堂は自らの好奇心を高めつつ、ラムネを飲み終えたところで、家に帰るのを後にし神崎の自宅えと向かった。