小説『ラグナロクゼロ(シーズン1〜2)』
作者:デニス()

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ファイルを開いて内容が見た事で真堂は驚愕した。なぜなら、その画面に映っている内容は、911の被害にあった人達の顔写真付きの個人データファイルだったのである。

「どうだい」

「これ……俺だ……」

当然そのデータには911の被害者である真堂の顔写真と個人データも乗っていた。

「俺はこれを見て、李玖が911の被害者だってわかったんだ」

いつの間にか椅子に座っていた神崎は、パソコンを操作して本のページをめくるかのように、次々と他の被害者のデータを真堂に見せる。

「そうか……、でもこんなのどっから手に入れたの?」

「『アルスターカンパニー』が『DGSE』の情報部経由で手に入れた極秘ファイルだ。それを見つけた俺がある方法で手に入れたんだ」

「ある方法って?」

「ハッキングして。李玖……俺『ハッカー』なんだ……」

「!」

神崎の言った事に意味も知らずに驚いた真堂は―――

 「……あの口がスースーするやつ―――」

「それ『ハッカ(×)』。俺が言っているのはパソコンの『ハッカー(○)』」

「そうなんだ……」

神崎の言った事に違う受け止め方をした真堂は、けして受け狙いで言った訳ではなかった。

「まったく……」

「ご、ごめん……」

「これが俺の秘密だ。他にもいろんな国家機関からも趣味で情報を集めてるんだ」

「凄い趣味だね……」

呆れた表情で真堂は、自分のある意味で犯罪に近い秘密を自慢気に言う神崎に、少しだけ否定的な感情が芽生えていた。

「ヌフフ、そうだろう」

「でもそれって犯罪なんじゃ……」

「いや、そのへんは大丈夫。ちゃんとサーバーに侵入した痕跡は消してあるから、バレなきゃいいんだよ、バレなきゃ」

それを聞いて安心した真堂はようやく床に腰を下ろして、パソコンの画面に映っている911の被害者の自分が乗ってる個人データを見る。

「凄いな……これ俺の住所や生い立ちまで書いてあるんだ」

「そりゃあ、『スパイ黄金期(冷戦)』の時代に創設された情報機関から、手に入れたやつだからな。これだけ正確な情報なのは当たり前だろ」

その個人データの一部を真堂から見ても、あまりにも正確な情報になっていることに感心してしまった。

「そういえばさ……」

「ん?」

「さっき言ってた『DGSE』ってなに?」

不意に言ったその真堂の言葉に、神崎は慣れない業界用語を与えたことを今になって自覚した。

「『DGSE』ってのは『フランス対外治安総局』のことで、その名の通りフランスの諜報機関だ。ちなみに大統領と首相に直属する情報機関でもあるんだよ」

「へー……ってそんな凄い所から盗んだやつなの!」

真堂が驚くのも無理はなかった。なぜならその国の情報機関から盗んだとしたら、現地の人なら『国家反逆罪』に近い。それに比べて神崎の場合は国外によって盗んだやつなので、一種のテロ行為に近い事でもあり、ヘタしたらフランスと日本の間の経済及び政治的な国交を悪化してもおかしくなかった。

「盗んだねぇ……、まあそういうことになるかな〜、でも俺の技術じゃあそんな国家レベルの『ファイヤーウォール』は、まだ突破できないって」

「え? だって―――」

「あれはアルスターカンパニーが手に入れたやつだ。つまりはあの会社が国家レベルの『ファイヤーウォール』を突破したやつを俺は頂戴したんだよ」

「なるほど……」

神崎は自分が犯罪行為に走った事に自覚を表したような呟きを見せたが、その中に真堂は疑問に思ったことがあったので問いかけてみると、その疑問をわかりやすい説明で解消された。

「まあ、偶然セキュリティが甘い所から手に入れたやつなんだけどね」

真堂は「このデータの運命的な出会いをただの偶然でかたづけるな!」と、心の中で叫び神崎の軽口に少し怒りを覚えた言い方をした。

「そういうことだ。まあこれでも飲めって」

「どうも……」

いつの間に入れたのか、コップに入れられたコーラを手渡され、素直に受け取った真堂は、飲み終えてしばらくしてから神崎の家を出た。この時、真堂はこのデータについて危ない匂いがした為に、あまり深入りはしなかった物の、いずれちゃんとした形でこのデータがまた新たな真実えと導くのはまだ先の話しだった。

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