矢島の腰に引っかかってた黒い塊の正体は、警察官がいつも持ち歩いているくらいの拳銃だった。
(矢島さん。一体なにを!)
危険物を所持している矢島が、なにか犯罪を犯そうとしている気配がしたので、さっそうと真堂は彼の跡をつけるのであった。
(それにしても……、一体どこにいくつもりなんだろうか……?)
尾行するのはよかったが、どこかの店で強盗でもするのかと思った。だが矢島が歩いている所はいつの間にかあまり人気(ひとけ)が少ない、夜店がなん店舗かある路地裏に行き着いていた。
(人は……よし、いないな)
「ん〜……ん?」
「矢島さん……だよね?」
周りに人がいないところを見計らって真堂は、ヤンキー歩きの矢島を引き止めようとする。
「おめぇは確か……崇妻の―――舎弟(しゃてい)」
「いやいやチャウチャウ!」
「んだったらなんの用なんだぁ?」
矢島の思わぬ勘違いに真堂は間違いだというサインをだし、話しの本題に切り替えようとするが―――
「う、うん。あのさ……警察の取り調べってもうすんだの?」
「ああ、すんだけど……それがどした?」
「ああ……」
初めて矢島と話しをした事で、少し緊張気味な常態の真堂はゆっくりと呼吸をし、気持ちを整えた。
「あ?」
「ちょっと唐突だけど、こんな所でなにやってんの? 夜遊びするのにはまだ早いと思うけど」
呼吸をした為か、とても落ち着いた常態で真堂は矢島に問うた。
「んなの、どうだっていいだろうが。ただの散歩だよ散歩―――」
「拳銃を持ち歩きながら?」
「………」
真堂の冷静な発言で矢島は言い訳でも考えているのか、視線をそらして黙り込んだ。
「んな物騒なもん持ってるわけねえだろうが」
「そう、じゃあその腰にぶら下げている物はなに?」
「これか? これはなあ……こういうもんだ―――」
「!」
とぼけた口調で、矢島が腰に引っかかっている拳銃を真堂に見せようと、手に取ったその瞬間―――