小説『ラグナロクゼロ(シーズン1〜2)』
作者:デニス()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

「あれは……組長に左腕(ナンバー3)として盃を交わしてからしばらくした後に、俺は組長にある所に連れてかれました」

「あるところ?」

「そのある所に着くまでなん時間ぐらいか目隠しされて、どこかは分かりませんでしたが、おそらく俺を信用しての事だと思うんですけど……」

「で、結局どこだっての」

「……家でした。なんか夏休みに行きそうな田舎の老人が隠居してそうな場所で、そこには文字通り老人がいやした。組長はその老人に会わせたかったらしいんですけど……」

(……二人とも喋ってるのはいいけど、俺の存在忘れてない? っていうか俺いる意味なくね?)

まるで自問自答する真堂はとてつもない疎外感に浸っていた。

「どっかのお偉いさんか?」

「へい、しかもかなりの。なんせあの組長が……深々と頭を下げてたんですから」

「―――続けろ……!」

矢島が驚くのも無理はなかった。なんせ普段の父・哲斎は部下の前で頭を下げるというイメージはまったく無い。というより部下の示しにより正確には完全に無いのであった。そんな哲斎のイメージが一瞬で崩れた矢島は、そのまま動揺せずに話しを進める。

「例の老人に俺を紹介し終えたら、またなん時間も目隠しをされ、帰りやした」

「なんなんだその老人とやらは? 生きた屍じゃあるまいし、名前ぐらい教えてもらってるだろ」

「はあ……その帰りに組長に聞いたら、「同じ志を持った同志」だと言ってやした。名前は確か……しん―――」

ヒュンッ

「え?」

-79-
Copyright ©デニス All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える