「あれは……組長に左腕(ナンバー3)として盃を交わしてからしばらくした後に、俺は組長にある所に連れてかれました」
「あるところ?」
「そのある所に着くまでなん時間ぐらいか目隠しされて、どこかは分かりませんでしたが、おそらく俺を信用しての事だと思うんですけど……」
「で、結局どこだっての」
「……家でした。なんか夏休みに行きそうな田舎の老人が隠居してそうな場所で、そこには文字通り老人がいやした。組長はその老人に会わせたかったらしいんですけど……」
(……二人とも喋ってるのはいいけど、俺の存在忘れてない? っていうか俺いる意味なくね?)
まるで自問自答する真堂はとてつもない疎外感に浸っていた。
「どっかのお偉いさんか?」
「へい、しかもかなりの。なんせあの組長が……深々と頭を下げてたんですから」
「―――続けろ……!」
矢島が驚くのも無理はなかった。なんせ普段の父・哲斎は部下の前で頭を下げるというイメージはまったく無い。というより部下の示しにより正確には完全に無いのであった。そんな哲斎のイメージが一瞬で崩れた矢島は、そのまま動揺せずに話しを進める。
「例の老人に俺を紹介し終えたら、またなん時間も目隠しをされ、帰りやした」
「なんなんだその老人とやらは? 生きた屍じゃあるまいし、名前ぐらい教えてもらってるだろ」
「はあ……その帰りに組長に聞いたら、「同じ志を持った同志」だと言ってやした。名前は確か……しん―――」
ヒュンッ
「え?」