「ちょっとまってください―――」
会議のさっそく意義を申し立てたのは、レゴニール=グラスチノコフだった。
「その一大プロジェクトというのは私が考案した『第五次中東戦争計画』の事では?」
「それは緊急凍結(中止)する事になった」
「な、なぜ!」
それほど最重要事項だということを強調するかのように、ロギアは先月レゴニールが考案したプロジェクトの緊急凍結を知らせた。
「それだけ重大な用事なんだろ?」
横から口を挟んだのは、レゴニールがもっともライバル視しているアムナ=グンディーニだった。
「アムナ貴様……」
「だってよ、『第五次中東戦争計画』はレゴニールとケビンの二人が担当していたはずなんだろ? だったら俺達残りの四人が呼ばれずに、その『緊急プロジェクト』が無かったら、今日は本社にその二人が呼ばれていたはずだろう」
「それは……」
アムナは少し目立ちたがりな傾向が見られる。正論を言ってることは変わり無いが、それが短所であるのは違いなかった。
「お二方ご静粛にお願いします」
「………×2」
トレースの一声で二人は納得を得られずに沈黙する。
「話しの続きだが、このプロジェクトには、あるスポンサー付きで行うことになった」
「スポンサー? ずいぶん久しぶりですね」
レゴニールが不思議に思うのは無理もなかった。なぜなら、ロギアの父であり先代の社長・ウィリアム・G=アルスター1世の代の頃は、まだ会社が中小企業だった時、いつもプロジェクトを進めるにはスポンサーが付くのはかかせなかった。だが息子のロギアが次いでからはスポンサーが付くプロジェクトは少なくなった。
「そのスポンサーとは」
「『元老院』だ……」
「!×6」
スポンサーの正体を言ったとたんに一同は騒然とした。なぜなら『元老院』というのは冷戦終結後から、対立している謎の組織のことだった。
「おまちください! 我が社はいつから、あの実体もわからない組織の手を借りなければならないのですか!」
レゴニールとアムナの議論に呆れていた神崎正志は、大事な会社のプロジェクトに、どこの馬の骨かもわからない組織の手を組むのは賛成できなかった。
「落ち着け神崎」
「しかし!」
「ここにいる何人かは気付いていると思うが、これは敵からの一時休戦だ」
「休戦?」
その言葉に少し妙に感じる正志。
「それと同時に、何らかの取引を持ち掛けたのではありませんか?」
しばらく目を閉じた後に話しだしたミラ・ル・ド=コレルは、直感めいた言葉にロギアの話しを進めようとした。