小説『ラグナロクゼロ(シーズン1〜2)』
作者:デニス()

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「そうだ。このプロジェクトに成功したあかつきには、わずか180億ドルの利益と『アヴァロン』の提供を約束された」

「金銭的な利益はともかく『アヴァロン』ですと!」

一同もう一度騒然した後に、オーベルト=シュタインが驚きを隠せない状態で急に立ち上がりデスクを叩いた。実際それは無理もなかった。なぜなら彼はその『アヴァロン』という物を捜索し担当していたからであった。それを苦労して探していた物が、こうも簡単に手に入るとなると怒りを覚える。

「オーベルト、気持ちは分かるが、別に君を攻めてる訳じゃない。働きにはいつも感謝しているさ。だからそんなに怒るな」

余り部下を攻めることを嫌うロギアは役目を終えなくても、優秀な部下には変わりないオーベルトを落ち着かせようとしていた。

「はぁー……」

 ロギアの説得でオーベルトはため息をつきながら席に着いた。

「……しかし敵が『アヴァロン』を手離すということは、敵からは同等の見返りが必要とするのではないのですか?」

正志はロギアに質問する。

「その為のプロジェクト『アルマゲスト・ロゴス』だ」

ロギアの言う『ロゴス』というのは、そのままの意味だと概念、理由、理論、その他もろもろの意味がある。アルスターカンパニー場合は緊急計画案の『隠語』としてよく使われている。

「『アルマゲスト・ロゴス』。それはまたありふれた名前なことで」

今すぐ皮肉を言わんばかりな物言いで感想を述べるケビン=リー。プロジェクトの名前によっては自分の出番は無いことを悟る。

「このプロジェクトに担当してもらうのは三人です。一人目は医療部門の神崎正志支社長。二人目は科学部門のミラ・ル・ド=コレル支社長。三人目はシステム部門のアムナ=グンディーニ支社長。以上」

トレースがプロジェクトの参加者を発表した後に、参加しない他の三人は納得がいかない表情を表した。特にレゴニールはうんざりしたような表情も混ざってた。

「参加しない他の三人は、『フォックスナイン(崇妻財団)』に対する防諜を強化するように」

商売仇(しょうばいがたき)の名前を口にした後に、ロギアは次のように答える。

「ではこれよりアルスターカンパニー緊急一大プロジェクト『アルマゲスト・ロゴス』を発令する―――」

この謎プロジェクトによって真堂が知らないところで、一国の超大国の運命を左右する計画がこのとき行われたのであった。

 「それでは『未来栄光われら祖国の創造の為に』……」

 ただ一言を残して―――

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