二時間後。
「ふぅー、つぎ李っちゃんどうぞ」
「分かった」
晩ご飯を済ませ、智美が最初に風呂に入り、次は真堂が少し遅い入浴をし始めようとしていた。
「あ〜、生き返る〜」
今日は一段と長く散々な一日を終え、真堂は極楽感を噛み締め、湯船に浸りながら発した声を室内に響き渡らせた。
(それにしても今日は大変だったな〜。そういえば名無しさん、ちょっと記憶取り戻したって言うけど、どんぐらい思い出したんだろうか……。あとで家族会議しないと)
顔半分を湯に潜らせ、真堂は後でアイスを食べながら名無しの記憶について、家族会議をする予定をたてた。
「さ、智美さん、いけませんって……!」
「いいじゃない、減るもんじゃいるまいし。それに、李っちゃんもいないことだし……」
「……ん?」
浴室の扉越しに微かに、智美と名無しの話している声が聞こえてきた。
「い、いけませんって」
「そんなこと言って、体は正直なクセに」
向こうではバスタオルを体に巻いている智美が、名無しを押し倒し、そのまま頬を紅潮しながら片手で硬直した秘部に添え、顔を近づきつつ口付けをせがもうとしてた。
「お、おれまだ風呂にも入ってないのに、そんな……」
「ウフフ……シャイなところも可愛いぃ……。ああ、もう我慢できない! いっただきま―――」
「―――しないって約束したよね……!」
「はっ!」
智美が真堂の目を盗んで、さっそく名無しを違う意味で食そうとしたとたん。急に冷たい視線が彼女の背中に突き刺さり、その視線の元えと向く。するとそこには下半身をバスタオルで巻いて、夜目が効いた猫のような目付きで姉を見る真堂の姿だった。
「り、李っちゃん……!」
「なにやってんの?」
「す、スキンシップよ」
「いや、もうスキンシップの域を通り越えてるから!」
なんとか誤魔化そうとする智美だが、明らかに淫らな体制を真堂にさらしていることでは、言い訳のしようがなかった。
「だってだって! 欲求不満なんだもん!」
「それでもダメ! つうかまともな言い訳ですらねえし!」
「じゃあさじゃあさ」
「なに?」
「李っちゃん代わりに相手してくれる?」
「バカですか?」
「別にやったっていいだろうがぁー!」
「逆ギレすんなぁー!」
かなり無茶苦茶な状況に、名無しはどう対応すべきなのか困っていたところ、完全にケンカの状態に入った真堂兄弟。この嵐が過ぎ去るまで、名無しについて家族会議は行われなかったという。
一方、おそらく敵で戦いの途中で退場したアシュレイは―――