小説『ラグナロクゼロ(シーズン1〜2)』
作者:デニス()

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同時刻。神奈川ホテルプラダ。最上階スウィートルーム。

「へー、君が失敗するなんて珍しいねえ」

能天気にアシュレイの手料理を食しながら話すディオラウス。

 「申し訳ございません……」

 そしてディオラウスの横に立ち、任務をこなせなかったことについて謝罪するアシュレイ。

「別に良いさ。組長の息子を殺さなくても、うちの組織になんの害があるわけでもないし。それについでだったから任務に差し支えはないと思うよ……」

「いえ……、それでも失敗したことにはお変わりはありませんから……」

堅い面持ちで反省の言葉を述べるアシュレイ。

「まったく、君は本当に堅物なんだから」

 「いえ、そんな……」

 慰めるかのように笑みを浮かべる主人に、アシュレイは謙遜する。

「それにしても、君の『クレイモア(大剣)』が素手で止められたとはねえ……」

「はい。あれは予想外でした」

あの戦いを改めて振り返ってみても、アシュレイにはあの名無しのみのこなしは、明らかに常人離れしたものであり、自分と同格の人物だと推測する。

「確かそこには三人いたんだよね?」

「はい。組長の息子をいれて私と同じ年の少年が二人。あとは二十代半ばの男が一人」

「例の真剣白羽取りの男」

「そうです」

アシュレイの話で一番興味を引いた人物。それは自慢の従者の攻撃を防ぎ、あろうことか手傷まで負わせた名無しに、ディオラウスの好奇心を湧かせた。

「アシュレイ。一度その人に会いに行こっか」

「え……!」

気まぐれに言ったディオラウスのその言葉にアシュレイは驚いた。

「なーに、ちょっとした和解みたいなものだよ」

「しかし!」

「大丈夫だって。それよりアシュレイ」

「え? あ……」

艶かしい眼差しで問いかけられたアシュレイは、ディオラウスが食事を食べ終えた事に気付いた。

「僕、食後の『デザート』が食べたいんだけど……」

「かしこまりました」

慌てた状態からすぐに仕事モードに切り替わったかのように、アシュレイはテーブルの上を片付け始めた。

 「じゃあ先に行ってるから」

 ディオラウスは先に寝室え入り、ベッドの横で服を脱ぎ始め下着姿になったところで、胸に巻いていたさらしを解いた。そのことでとても年(14歳)には似合わない、豊満な丸みのある胸をあらわにした。

「ふぅー、まだかな……」

そしてディオラウスは下着を全て脱ぎ捨て、一糸まとわぬことで、よりいっそう妖艶漂う姿になり、その後にベッドで横になり、期待に胸を膨らませながらアシュレイが来るのを待った。

ガチャ

「お待たせいたしました」

片付けを終え寝室に入ったアシュレイは、ディオラウスに食べさせるその『デザート』らしき物は持ってはいなかった。

「それじゃ、頼むよ」

そう、ディオラウスが言うように『デザート』というのはアシュレイ自信のことで、彼女は違う意味で彼を食そうとしていたのである。

 「それでは―――失礼します」

「ン……」

お互いに口付けを交わしたと同時に、ディオラウスの言う『デザート』改め『夜伽(よとぎ)』を始めたのであった。
 一方、途中で途切れた真堂達は―――

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