同時刻。神奈川ホテルプラダ。最上階スウィートルーム。
「へー、君が失敗するなんて珍しいねえ」
能天気にアシュレイの手料理を食しながら話すディオラウス。
「申し訳ございません……」
そしてディオラウスの横に立ち、任務をこなせなかったことについて謝罪するアシュレイ。
「別に良いさ。組長の息子を殺さなくても、うちの組織になんの害があるわけでもないし。それについでだったから任務に差し支えはないと思うよ……」
「いえ……、それでも失敗したことにはお変わりはありませんから……」
堅い面持ちで反省の言葉を述べるアシュレイ。
「まったく、君は本当に堅物なんだから」
「いえ、そんな……」
慰めるかのように笑みを浮かべる主人に、アシュレイは謙遜する。
「それにしても、君の『クレイモア(大剣)』が素手で止められたとはねえ……」
「はい。あれは予想外でした」
あの戦いを改めて振り返ってみても、アシュレイにはあの名無しのみのこなしは、明らかに常人離れしたものであり、自分と同格の人物だと推測する。
「確かそこには三人いたんだよね?」
「はい。組長の息子をいれて私と同じ年の少年が二人。あとは二十代半ばの男が一人」
「例の真剣白羽取りの男」
「そうです」
アシュレイの話で一番興味を引いた人物。それは自慢の従者の攻撃を防ぎ、あろうことか手傷まで負わせた名無しに、ディオラウスの好奇心を湧かせた。
「アシュレイ。一度その人に会いに行こっか」
「え……!」
気まぐれに言ったディオラウスのその言葉にアシュレイは驚いた。
「なーに、ちょっとした和解みたいなものだよ」
「しかし!」
「大丈夫だって。それよりアシュレイ」
「え? あ……」
艶かしい眼差しで問いかけられたアシュレイは、ディオラウスが食事を食べ終えた事に気付いた。
「僕、食後の『デザート』が食べたいんだけど……」
「かしこまりました」
慌てた状態からすぐに仕事モードに切り替わったかのように、アシュレイはテーブルの上を片付け始めた。
「じゃあ先に行ってるから」
ディオラウスは先に寝室え入り、ベッドの横で服を脱ぎ始め下着姿になったところで、胸に巻いていたさらしを解いた。そのことでとても年(14歳)には似合わない、豊満な丸みのある胸をあらわにした。
「ふぅー、まだかな……」
そしてディオラウスは下着を全て脱ぎ捨て、一糸まとわぬことで、よりいっそう妖艶漂う姿になり、その後にベッドで横になり、期待に胸を膨らませながらアシュレイが来るのを待った。
ガチャ
「お待たせいたしました」
片付けを終え寝室に入ったアシュレイは、ディオラウスに食べさせるその『デザート』らしき物は持ってはいなかった。
「それじゃ、頼むよ」
そう、ディオラウスが言うように『デザート』というのはアシュレイ自信のことで、彼女は違う意味で彼を食そうとしていたのである。
「それでは―――失礼します」
「ン……」
お互いに口付けを交わしたと同時に、ディオラウスの言う『デザート』改め『夜伽(よとぎ)』を始めたのであった。
一方、途中で途切れた真堂達は―――