同時刻。真堂家(自宅)。客間。
「痛い……×2」
ソファーに姉弟共々なぜ痛がっているのかは言うまでもない。最初は姉が逆ギレしたことから始まり、口ゲンカで済むことが殴りあいにまで発展し、その途中クロスカウンターで互いに渾身の一撃をくらわした。後にとても小さな争いが終わったのである。
「あ、あの……なんかすみません。俺なんかの為に……」
風呂に最後に上がった名無しはまるで自分が撒いた種のように、妙な気持ちを持ちながら反省する。
「いいんですよ名無しさん。元はと思いえば姉さんが悪いんだから」
「……はいはい、悪うござんした」
(この人は……)
まったく反省の色を見せない智美に真堂は呆れた思想を浮かべる。
「それで……」
「ああ、記憶を取り戻した件ね」
反省会はこれぐらいで済ませようと、真堂は名無しの記憶について本題・家族会議えと切り替えた。
「どのくらい取り戻したの?」
「いや……、断片的にしか取り戻してはいないんですが、あの時は一回死んでてたから、うまく思い出せないんですよ」
「ああ、臨死体験みたいなものかしら」
すねた状態から智美は吹っ切れたかのように話しに介入してきた。
「多分そんな感じですかね。ただ、その臨死体験した途中、記憶の一部かもしれないですけど、別々の映像と声が脳裏によぎったんです」
「映像と声が……具体的に言えば『フラッシュバック』みたいなもの?」
「それが―――」