小説『ラグナロクゼロ(シーズン1〜2)』
作者:デニス()

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名無しが言う臨死体験の途中に脳裏によぎった12個の『フラッシュバック』というのは―――

 『アベル』

 一個目のフラッシュバックは、長髪で銀髪の女性が満面の笑みで、最愛の息子を呼ぶように問いかける母親らしき人物が脳裏によぎった。

 『すまない……』

 二個目のフラッシュバックは、燕尾服(えんびふく)をきた黒髪の青年が苦しそうな表情で、銃口を向けているのが脳裏によぎった。

 『母親を助ける為におまえは何を代償にする?』

 三個目のフラッシュバックは、黒い角を生やしていて、とても凶々しい狼にも似た紳士に問いかけられるのが脳裏によぎった。

 『やつらの組織を叩くのにはアベル、おまえの力が必要だ』

 四個目のフラッシュバックは、友を見る眼差しで、ゲルマン系(金髪で青い瞳)の男性に協力を求められるのが脳裏によぎった。

 『お慕えしております。どうかお側にいてくれませんか』

 五個目のフラッシュバックは、異常なほど白い肌をした着物姿の美女が、涙をこぼしながら、傍にいたいという気持ちで問いかけられるのが脳裏によぎった。

 『あなたを敬愛に値する人として見たいです』

 六個目のフラッシュバックは、ショートカットで銀髪の美少女が真剣な眼差しで、友好を求めるのが脳裏によぎった。

 『ジークハイル!』

 七個目のフラッシュバックは、オールバックの赤毛で赤い瞳をしていて、白い雪原の大地で鉤十字の軍服を着こなしたドイツ将校が、狼のような目付きで自国を誉め称えるのが脳裏によぎった。

 『俺、この戦争が終わったら本を書こうと思っているんだ』

 八個目のフラッシュバックは、幾多の戦火の中で顔が汚れた独りのライフルを片手に持った兵士が、まるで自分の未来を見透しいているかのように、夢を語っているのが脳裏によぎった。

 『君は化け物なんかじゃない。例え涙が枯れきったとしても、同じ人間には違いないんだから』

 九個目のフラッシュバックは、体が傷だらけの金髪の美少女が、まるで同じ仲間を見るような眼差しで慰められるのが脳裏によぎった。

 『アベル……教えてやろう。私を倒した後に待っている貴様の未来は、無秩序に広がる終わりなき戦場に駆り出されることだ……』

 十個目のフラッシュバックは、体に大きな傷を負ったおかっぱの美女が、瀕死の状態で口元に血をたらしながら、おそらく傷を負わせた相手の先の運命を宣告するのが脳裏によぎった。

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