小説『ラグナロクゼロ(シーズン1〜2)』
作者:デニス()

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 そして今に至る。

「それにしても派手に壊れているなー。どうやったらこんなふうに壊れるんだ?」

 「ああ……そうだね」

ブロンズ像の細かい破片は、真堂と獅郎がホウキで集めている。それと手に持てるくらいの大きな破片は、神崎が集めて処理している。そんな中でブロンズ像の倒壊した跡を見ていて、明らかに不自然な壊れ方をしていることを感じる神埼は、ちょっとした潜入感にとらわれかけていた。

(変なところで悟られなきゃいいんだけど……)

 「どした李玖?」

 心配そうに獅郎が問う。

「いや、なんでもない!」

ブロンズ像の壊れた原因がそう簡単にバレないと思う真堂だが、さすがにそれについて指摘されると気まずくてしょうがなかった。

(あれ? よく見るとこれ空洞になってないか?)

破片を片付けている途中、謎を解く手がかりを見つけた神崎。このイエスのブロンズ像は壊れる前、中が人が入るくらいの空洞だったのではないか、と仮説を作り出しながら作業を続ける。

「ちきしょうめ……、なんで俺がこんなことしなきゃいけねえんだよ……」

「まあまあ、ともかく単位が取れなきゃ卒業できないんだからさ、がんばろうよ」

嫌々掃除をする獅郎に対して、真堂はちょっとした説得をして彼のイラだちを和らげる。

(ちゃんと出席すればいいのに……ん?)

そう神崎が呟くと、教会内にある祭壇を中心に、左右に並べてある横長椅子の方えと向く。すると、二人のやり取りを座りながら観察している少年を見つける。

「すいません。今そうじ中なんですけど……」

「神様の像を壊すなんて、どこの異端者(いたんしゃ)の仕業なんだい?」

「は……?」

見た目からして外国人だということは認識した神崎。だが遠くて少年だと思っていたが、よく見ると艶かしい雰囲気を漂わせている男装した少女だった。

「まあ……、わからないらしいですけど」

「ん〜、そうかあ……まあ、ジャマをする気はないから続けてよ」

「ああ、そうスか……」

あまりにも美形の少女だった為か、神崎は失礼な言動を控えたようなしゃべり方で、かなりかしこまった態度になってしまう。追い払おうとするはずが逆に自分が追い払われてしまった事に、ちょっとした情けなさを感じてしまった。

「ん〜……」

「どうしたの?」

戻った神崎は真堂を見て次のように答える。

「あっちの美人さんが、おまえに用があるみたいだぞ」

親指で男装した少女を指した神崎は情けない表情を浮かべながら、真堂に知らせた後に仕事に戻った。
神崎に言われたとおりに、真堂は掃除を後にして男装した少女の方えと向かう。

「あの、なにか俺に用ですか」

「ん……そうそう君に用があって来たんだ」

(誰だろう……? 顔見知りでもないし……もしかしたら、ちょっと風変わりした逆ナンだったりして)

真堂は勘違いかもしれない事にはあまり期待をせず、男装した少女はかわいらしい笑顔見せながら次のように問う。

「真堂李玖くんだね」

「え……!」

男装した少女は急にフルネームで訪ねられて、真堂は少し焦ったが、すぐに対応した。

「そうですけど、あなたは?」

「ディオラウス=マーロウ。ディオって呼んでよ」

「はあ……」

馴れ馴れしい自己紹介をしながら、自分の短い白髪をわずかに手でなびかせながら、ディオラウスは色仕掛けでも掛けるかのような眼差しで真堂を見つめる。

「ちょっと外で話さない」

「ちょっ、すいません。俺まだ仕事中なんで」

「大丈夫だって、すぐに終わるから」

「ええ! ちょっと!」

真堂の腕を掴んだディオラウスは、無理矢理にでも真堂を外に連れ出した。

「ほら早く!」

「だからおれ掃除がまだ―――えっ!」

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