小説『IS〜ただ一発の魔弾として〜』
作者:ディアズ・R()

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第十二話





「アッハッハッハッハッハ!!どうしたんですか?まだまだ始まったばかりですよ♪」
「クッ!この!」

けして止まる事の無い銃弾の暴風が、ラウラを追い詰めていく。
AICを使って止め様にも、数が多い上にビット兵器のビームは止める事が出来ない。
無数にある固定砲台が実弾の嵐を創り、ビット兵器が縦横無尽に動き攻撃して、実力未知数のISがいる。

「化け物め!!」
「アハ♪私は化け物じゃなくて、一発の魔弾よ?撃たれたら最後、全てを打ち抜くまで止まれないし、止まらないの♪さぁさぁ、耐えられるかしら?コード・光の柱」
(コード・光の柱)

ビット兵器から放たれたビームが、ラウラを中心に螺旋状の光が渦巻く。
それはまさしく、光の柱。

「偏向射撃(フレキシブル)……ここまで完璧に使えるなんて」
「すげぇ」

ISのハイパーセンサーが、一夏とシャルが来た事を教えてくれる。
でも、今はそれよれも重要な事がある。

「さぁさぁ♪しっかり避けないと、穴開きチーズになりますよ♪ある意味中古品ですね♪アッハ♪貴女の初めて、私にくださいな♪」
「クソッ!……なめるなぁ!!」

ラウラは、ワイヤーブレードを使って自身の周りを囲うビームを止めようとするが、当たらない。
徐々に焦り始めるラウラ。
そして、その焦りが決定的な隙を作ってしまう。
ハイパーセンサーが背後からの攻撃に気付いた時には、全てが手遅れだった。

「ガァッ!?」

絶対防御を発動させるほどの威力を持ったグレネードが、ラウラの背中で爆発する。
その瞬間、ラウラは動きを止めてしまった。
周りを囲んでいたビームが、ISの装甲を削る。
全方位から銃弾とミサイルが、ラウラを吹き飛ばす。
ボロボロになりながらも、起き上がろうとするラウラの前に、ユラが立つ。

「グッ……はぁはぁはぁ、貴、様……」
「うふふ、這い蹲って無様ね?今どんな気分かしら?憎い?悔しい?殺したい?でもね、弱いのがいけないのよ?」

ユラはラウラの額に、ショットガンの銃口を向ける。
とても楽しそうに、銃口を押し付ける。

「怖い?そんなわけ無いわよね?だって、軍人でしょ?」

ドォンッ!ドォンッ!ドォンッ!

「ガァ!?ぐぅ!?ぎっ!?あアァァぁぁアぁァぁぁァァ!!!」
「ふふ、うふふ、あはは、あっはっはっはっはっは!!」

ユラは笑いながら、ラウラを撃つ。
何度も、何度も、何度も……
今ユラが使っているショットガンは、衝撃はあるがシールドエネルギーにダメージがほとんど通らない。
だから、遠慮無く撃つ。
ラウラが壊れるまで、何度でも。

「さぁ!眠りなさい、何も持たない黒ウサギさん♪」


◇◇◇◇◇


勝てない……

世界が黒く染まる。

強すぎる……

あの狂気を思い出し、体が震える。

どうしたらいい……

震える身体を、押さえつける。

どうすればいい……

今まで感じたことの無い、絶対的な恐怖。

私に、力が無いからなのか……

ラウラは求める。

もっと、もっとだ……

力を求める。

アイツを……

強大な力を。

アレを……

化け物(ユラ)を。

殺せる力が欲しい!!

『汝、自らの変革を望むか?より強い力を欲するか?』

声が聞こえた。
それに答えるように叫ぶ。

「どんな力でもいい!!よこせぇ!!」

≪機体損傷レベルD。精神状態最大値。意志確認。『ヴァルキリートレースシステム』起動≫

狂いそうなほどの力が流れる。
だが、一度あの狂気を向けられたラウラには解ってしまう。
この力では、足りない。
アレを如何にか出来ない。
そう理解した時には、力の流れが止まっていた。

≪エラー発生。精神状態計測不能。意志確認にエラー発生。システムの起動にエラー発生≫

足りない……

力が、足りない……

いや、ホントに力が足りないのか?

何も見えない世界で、上を見上げる。

私には、何が足りない?

無意識に、涙が溢れる。

アイツの言うように、何も無いからか?

悔しいのからなのか、悲しいのかなのか、絶望したからなのかは分からない。

教官……教えてください……

「誰か……助けて……」

そう呟いた瞬間、周りの景色が変わる。

そこは、雨の降る墓場だった。
そんな場所に、一人の少女がいた。
少し幼いが、間違い無く魅神癒螺だ。
目の前の墓石を見るように俯いている。
雨の降る中、傘も差さずに何時までもそこに佇む。

ここは何所で、何故アイツが居る?

そう考え、ユラに近づく。
何故お前は強い?
何故お前は笑える?
何故お前は戦える?
分からない分からない分からない分からない分からない!!

「今のアンタじゃ分からないだろうね〜」

背後から声が聞こえた。
振り向くと、黒いウサギの耳を付けた自分がいた。

「誰だ!!」
「ずっと一緒にいるのに、分からないの?」
「何?どういう意味だ?」
「さぁ?自分で考えな〜」

こいつ、何故気配が無い?
IS学園に来てから、分からないことだらけだ!
アイツの強さも、私に足りないものも、何もかも!!

「ふう……わかったわかった。ヒントをあげよう。お前は何で一人で戦う?何で力を求めてる?」

首を傾げながら聞く、目の前の自分。
何故そんな事を聞くのか分からないが、答えなくてはいけない気がした。

「決まっている!誰よりも強く!何よりも上に行く為だ!」
「へ〜なら、大好きな教官よりも強くなると?そういうことでだろ?」

そう言われ、何も言えなくなった。
私は、教官よりも強くなりたいのか?
私は、教官を超えられるのか?
私は、教官になれるのか?
いや、違う。
そうか、そう言う事か。
私は、教官じゃない。
教官の様に強くない。
アレの、魅神癒羅の強さは、アイツのものだ。
なら、私には何がある?
私は、何を持っている?

「ハッ!やっと分かったか。遅すぎるぞ、私の相棒」
「私は、教官じゃない。私は、ラウラ。ラウラ・ボーデヴィッヒだ。それ以上でも、以下でもない」
「これで、お前は強くなれる。だけど、彼女には勝てない。経験も、覚悟も、犠牲さえ払っていないが故に勝てない。だけど、驚かせるぐらいは出来る」
「そうだな……お前の力、私に貸してくれるか?」
「じゃなきゃ出てこないよ。お前は、お前としてやられて来い、ラウラ・ボーデヴィッヒ」

その言葉に無言で頷き、目を閉じる。
自身を確認する為に。
自分を理解する為に。
目を開け、一歩前へ進む。
そして―――


◇◇◇◇◇


ラウラ・ボーデヴィッヒが動かない。
ゼロ距離の連続射撃を受け、気絶したのだろう。
ただ、撃っている時に違和感を感じた。

「あれは……共鳴?」
(その可能性は大です。途中、ヴァルキリートレースシステムの発動を確認しましたが、エラーが発生した様です)
「ふむ。と言うことは……」

ユラは、ラウラから距離をとる。
周りの者達は、勝敗が決まったとを確信したが、ユラは呟く。

「まだ、終わりじゃありませんよね?」

ラウラが、ゆっくりと起き上がる。
さらに、ラウラのISシュヴァルツェア・レーゲンが輝き始める。
ISの輝きを見て、ユラは嬉しそうに笑う。

「ふふ、うふふ、ははは、あははははは、アッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!」
「私には、何も無いと思っていた。だが、私には共に戦う相棒がいた!それを気付かせてくれたこと、感謝する。最後に、一勝負してもらうぞ!!」

シュヴァルツェア・レーゲンが、姿を現す。
スラスターが三つになり、黒から黒銀へと変化していた。
レールカノンは連射が可能な三連式に強化され、両腕に銀色の固定型ブレードが追加されている。
ワイヤーブレードは、ワイヤーが無くなりビット化している。
まさしく、攻撃特化型となった。

「あっは♪いいよ♪私と、殺()し合おう!!」

両手武器をスナイパーライフルに高速切替(ラピッド・スイッチ)する。
自身のビット兵器、空の欠片と共に撃ちまくる。

「これでも、ギリギリか……だが!!」

全ての性能が上がった筈なのに、ギリギリ回避するしか出来ない。
ワイヤーブレードではなく、ブレードビットを飛ばして牽制する。
レールカノンで、空の欠片を打ち落としていく。
だが、一機落とすだけでもかなりのシールドエネルギーが削られる。
勝てないと分かっている。
それでも、手を伸ばせば届くかもしれない。
だからこそ、ラウラは賭けに出る。
瞬時加速(イグニッション・ブースト)を使い、一気に近づく。

「もらった!!」
「アハ♪残念♪」

あと少しの所で、ユラのISが輝いた。
ラウラの時よりも、激しく。
光がより強くなった時、衝撃で吹き飛ばされる。
何とか体勢を立て直し、見上げると……

「バカ、な……」

そこには、女神がいた。
女性らしさが極まったフォルム。
より巨大になって浮かぶ赤い機械翼。
それはまさしく……

「三次、移行……」
「この姿を見るのは、貴女で二人目ですよ♪では、お休みなさい♪」

この瞬間、ラウラの完全敗北が決定した。
それでも、ラウラは喜べた。

「あぁ、アナタこそが、私の……」

この日、アリーナの一角が消し飛んだ。

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