小説『ソードアート・オンライン stylish・story』
作者:アカツキ()

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第二十三層 解放軍

昼食を食べ終えた4人は第一層の『はじまりの町』にやって来た。
シュウは自分の有名度を考慮し、何時もの真紅のコートではなく、紅い私服を着ていた。リベリオンも今はデータ化し、アイテム欄に仕舞っていた。辿り着いた矢先、アスナがユイに尋ねる。

「ユイちゃん。ここに見覚えのある建物とかない?」

しかしユイ自身には覚えがないのか首を横に振り、それを否定する。
シュウはこの時、一つの疑問を浮べていた。プレイヤーである自体は必ず此処を通り、覚えようとしても自然と覚えてしまう程なのに、それを覚えていないと言うのは不自然な事だった。そしてこんな幼い少女が今までどうやって生き抜いて来た事を。
シュウの思考を遮るかのようにキリトが口を開く。

「まあここは凄く広いからな。とりあえず市場に行ってみよう」

「そうだな。ここだけじゃユイも分かんねぇみたいだしな(考えていても仕方ねぇか)」

そう言うと市場に向かって足を運んだ。
しかし市場は人通りが少なく過疎と化していた。現在のSAOの生存者は6000人程で、その内の2000人がこのはじまりの町で過ごしている。死ぬ事を怖れる者・・・戦う事が出来ない者。それだけでもこの町はそれだけの人数になるのだが、ここまで人通りが少ないのは不可解な事だった。

「キリト。アスナ。気付いたか?」

「ああ。はじまりの町なのに人が少ない。見るのは店を営んでいるNPC位だ」

「依存者の3割がこの町に居るはずなのに・・・まさか『軍』が?」

軍・・・総称『アインクラッド解放軍』。文字通り、このSAOを攻略するために作られたギルドだったが、その力が大きく拡大して行き、今ではこのはじまりの町で訳のわからない掟の様な物を作り、好き勝手やっている連中だった。
市場を歩いていると・・・

「その子達を放して下さい!!」

と女性の声が響いて来た。

「今のは!?」

「恐らく軍の連中だろうよ。キリトはユイを背負ってるからゆっくり来い!アスナ、行くぞ!!」

「うん。キリト君、ユイちゃんをお願い!!」

「分かった!!」

シュウとアスナはその場から走り出し、声が聞こえてきた方へ急いだ。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「そこを退きなさい!!」

茶髪の女性は10人近く居る『軍』の連中と対峙していた。

「それ出来ない相談だな。アンタ等、教会の連中は滞納しているからな」

「装備全部置いて行って貰うか?じゃないと子供達が唯じゃ済まねぇかもな?」

「「「「ハハハハ!!」」」」

軍の連中は自分の背後にある力に酔い痴れているのか簡単に他人を見下していた。そしてその女性は自分の腰に刺しあった剣の柄に手をかける。

「こうなったら・・・力付くでも」

「おいおい。シスターさんよ。この人数で俺達とやり合おうって言うのか?」

「くっ・・・!!」

確かに人数的には不利があった。そして子供たちを人質に取られている今では下手な行動は子供たちを傷つけてしまう事になる。
女性が諦め、持ち物を軍に提供しようとした矢先、二つの人影が軍の頭を飛び越えた。そして一人は軍と向き合い、一人は子供達を落ち着かせるために話しかける。

「もう大丈夫。装備をしまって?」

子供に話しかけた人・・・アスナの声に安堵を抱いたのか、子供達は装備を戻す。しかし軍の連中は黙っては居なかった。

「おうおう、何だ何だ!!何ヶだ!?テメェ等は!?」

「我等軍の任務を邪魔しようと言うのか!?」

「Ha!!軍の任務?聞いて呆れるぜ。テメェ等が勝手に決めた事なんざ知った事じゃねぇよ」

軍の怒りを向き合った人・・・シュウが一言で貶した。そしてさらに追い討ちをかける。

「ましてや、虎の威を借りている腰抜け共にそんな資格なんかねぇよ。さっさと失せな」

「き、貴様!!我等を愚弄するか!!」

シュウの言葉を聞いた軍の連中は一斉に自分の得物を引き抜いた。それを見た子供達は再び、恐怖に煽られる。そしてシュウがアスナに言い聞かせる。

「アスナ。お前は後ろの子供達を頼む」

「私も手伝った方が良いんじゃないの?」

「あんな腰抜けFox共に遅れを取る俺じゃねぇよ。偶には兄貴を頼ってくれて良いじゃねぇか?それにお前がやったら、血盟騎士団に後々厄介事が出来るだろう?」

シュウの言葉にアスナはヤレヤレと呟くと子供達を自分の背後にやった。シュウはそれを見るとデータ化していたリベリオンを取り出し、右肩に担ぐ。

「我等に逆らった事を後悔すると良い!!」

「如何に落ちぶれた奴等が言いそうな台詞だな。さっさと来な!Let’s rock(遊ぼうぜ)!!」

シュウの挑発に簡単に乗ったのか軍の連中は一斉にシュウに飛び掛った。

「兄ちゃん!危ねぇ!!」

「避けて!!」

子供達は悲痛の声を張り上げていたが、シュウは一切の焦りも見せずに・・・

「Blast off(吹き飛べ)!!!」

リベリオンを横に薙ぎ払う。そしてその剣圧が一斉に連中を吹き飛ばし、地面に倒れさせる。

「な、何だ今のは!?」

「剣はぶつかっていなかった・・・と言う事は奴の剣圧か!?」

そして連中が見た姿は何時もの真紅のコートを纏っているシュウの姿だった。そしてリベリオンの剣先を軍の連中に向けながら、声を張り上げる。

「Hey!これで終わりか?こんなんじゃ遊びたんねぇぞ!?」

シュウの姿を見た軍の一人が思い出したのか、声を張り上げる。

「真紅のコート・・・銀のドクロの大剣!!こいつまさか・・・真紅の狩人のシュウ!!」

「察しが良いな。そいつの言う通り、俺はデビルメイクライのシュウだ。これ以上やるってんなら、俺は容赦しねぇ・・・テメェ等に悪魔が泣くほどの力ってモンをその身に教えてやるぜ!!」

シュウの殺気と鋭い眼光に連中は心を恐怖に煽られたのか、悲鳴を上げながら脱兎のようにその場からいなくなった。

「Ha・・・Too easy(楽勝だな)。こんなんじゃ腹の足しにもなんねぇよ」

シュウは一人愚痴を零し、リベリオンを背中に担ぎ直す先程の女性がシュウにお礼を言いに来た。

「助けて下さって、ありがとうございます!!」

「気にしなくて良いぜ。俺は当たり前の事やったまでだ」

「自己紹介がまだでした。私は教会のシスターをやっている『サーシャ』です」

「俺は言わなくても分かると思うが、シュウだ。よろしくな?サーシャ」

シュウとサーシャが話しているとキリトがユイを背負ってゆっくりとやって来た。

「もう終わったのか?」

「まあな。歯ごたえの無い連中だぜ・・・全く」

そしてシュウはアスナの背後に居た子供達に話しかける。

「よう。怪我は無かったか?」

「兄ちゃん・・・もしかして、シュウ?」

「そうだ。俺が真紅の狩人のシュウだ」

それを聞いた子供達はまるでヒーローを見ているような目でシュウに近寄る。

「ねぇ!さっきのあれどうやったの!?」

「僕もやってみたいな!!」

「俺に剣を教えてくれよ!!」

などなどまるで濁流のようにシュウに迫る。シュウは子供たちの扱いは慣れていないのかどう対応しているのか困っているみたいだった。しかし次の瞬間・・・

ガガガ!!!

「ぐっ!?」

まるで嫌な雑音のような物が耳に走り、そして体の自由が一瞬奪われたような感覚に陥った。そしてユイがキリトの背中から力が無くなった様に落ちそうになった所をアスナがギリギリの所で受け止めた。

「ママ・・・私、私」

ユイは何かに怯えるようにアスナの腕の中で嗚咽を上げていた。アスナがユイをあやしている内にシュウは一旦子供達から離れ、キリトに近寄った。

「キリト」

「分かってる。さっきのは一体・・・何だったんだ?」

「分かんねぇ。だが、さっきの感覚は俺達三人にしかなかったみたいだな。教会の人達は何ともなかったみたいだ」

「ユイ・・・お前は一体、何者なんだ」

キリトとシュウの疑問は晴れる事無かった。そしてサーシャの案内で教会に一旦赴くこととなった。

(後書き)

感想と指摘。よろしくお願いします!!

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