小説『数ページ 読みきりもの』
作者:下宮 夜新()

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理科室にて

実は川合さんと級友だった水色髪少女と黒髪少女の二人。
「川合さん、実験用に使う卵、持ってきてくれた?」
「ええ」
 水色髪少女の問いかけにニワトリを持ちながら川合さんが振り向く。
「実験用に使う卵なのにどんだけのことしてんの〜!?」
 ニワトリが早速卵を産むように調教でもされていたのか産み始めている。
「見ての通り、金の卵を産むニワトリよ!!」
 水色髪少女と黒髪少女の驚きの声が重なった。
「キャ――――――スゴ――――――!」
 川合さんがいつの間にか卵の強度を確かめているのか机に叩きつけている。仮に割れたとしてもいつでも産ませられるからであろう。 姿は見えないがきっと清掃班がスタンバっていたに違いない。

「固いわ」
 とはいえ、川合さんがそんな行動をまさかするとは思っていなかったので二人の少女は言葉を失う。
「ロードローラーを要請しましょう」
 金持ちの特権を生かして重機を持ち出そうとした川合さん。
「川合さん、間違いを犯したら……」
 水色髪少女が川合さんを諌めようとすると後に続けて
「認める勇気も大切!」
 黒髪少女が川合さんに訴えかけた。


 ある日の体育の授業中、やる気がないのかどこか体の調子が不明な川合さんが見学しているのに気づいた水色髪と黒髪の少女が小声でささやきあっている。
「川合さんが専属医師を連れてきたわ! さすがお金持ち」
 
 見学している河合さんのそばに白衣で医療器具を持っていそうな男性が立っていた。
「川合さん、立派な専属医ね!」
 何の疑いもなく、見たまんまのことを聞く水色髪の澤井さん(体操服に名前をつけているのでやっと名前がわかる)、黒髪の裏さんはもしかしたら突拍子のない展開を期待しているのかもしれない。
「違うわ、澤井さん」
 持ちやすい紙で遊んでいた川合さんに否定される。

「〇×ゲームのプロの人よ」
 自分で遊ぶわけではなく、川合さんはプロが遊んでいたゲームを見るが楽しかったみたいだ。
「この格好は只の趣味よ!」
 急に澤井さんが迷惑そうな声をだしているのでどうしたのかと思いきや、〇×ゲームのプロの人がおかしなマネをしようとしている。
「やめて!」 「私の苗字で〇×を楽しまないで!!」
 澤井さんの「井」の字が〇×ゲームで遊べそうだからと実際に書いていた。澤井さんに強く殴られてもやめる気配はなかった。

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