小説『数ページ 読みきりもの』
作者:下宮 夜新()

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 作者が初めて書いた気がする恋愛ものです。どういう感想を持ったか教えて頂けると参考になってありがたいのでよろしくお願いします。これでタグの「恋愛要素」が埋まったかな。         

            
            『スマイルふたつ』

 ある日突然僕の彼女が倒れた。僕は急いで病院におぶって連れていく。 意識を失っていたので入院手続きを僕が彼女の両親代わりにした(ちなみに彼女の両親は長期海外旅行中だった)そして原因不明のひどい高熱を発し、三日三晩眠り続けた――がしかし四日目の朝に何事もなかったかのように目覚める。ちなみにこの四日間、ボクは病院に無理を言って大学を休んでずっと看病していたのだ。
「由歌……平気……なのか?」
「あれ? 病…院? 私どうして……」
 
 どうも由歌は倒れた時から記憶が飛んでいるようだった。――がしかし……
「うーん……非常に申し上げにくいのですが……」
 医者が異常はないように感じるが、感情の欠落としか思えないと診断結果を僕に告げてきた。
「彼女さんは『悲しみ』をなくしてしまっているようなのですが……」
 僕は医者の言葉をすぐに理解出来ない。
「………………はい?」
 時間を作っては僕は由歌と遊ぶことにした。
「ねえ、次はどこ行こうか?」
「え……ああ。由歌の好きなところへ行こう!」
 この奇病は世界で数人だけ前例があったようで急な発熱の後に感情の一つ二つ持っていってしまうというものらしい。
「まあ……喜びなどの感情をなくす人に比べればあまり困ることでもないですし、良いぐらいかもしれませんよ」
 そんな感じでヤブ医者(と感じた)が無責任に言ったが、人間の感情がそう簡単に単純である訳もなく、試しに彼女が悲しむであろうことをしたら非常に苦い顔をされた。

 無くしてしまった「悲しい」部分を他の感情で補っている……とそういうことなのだろう―――だけど僕には泣き虫の彼女が必死で我慢しているように見えて――――そして僕は「彼女を悲しませない」と決意した。

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