小説『数ページ 読みきりもの』
作者:下宮 夜新()

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 そんな押し問答をしている間に噂で雇ったという二人の人物が戻ってきた。
「ナサー、終わったぞ。次はないのか?」
 仕事から戻ってきた卓樹と同じくらいの少女(しかし、彼女はまだ約十才くらい、魔族は人間より成長が早いのかも)が気づく。

「おっ、ははーんさては弟だな?」
「あっ……卓樹です……」
その少女を見て卓樹は(かわいい子だな)と思った。
「イールです」
 感じ的に男だと思った人に卓樹は挨拶を返す。
「どうも……」
 少女がイールに追随してか自己紹介してきた。
「私はルベー……数多くの大魔導士を産み出したストルーア家の末裔だ、大事に扱えよな下等生物」
 少女の言動を聞いて卓樹は大きな後悔を覚える。

「すいません、すいません、すいません」
 イールさんが必要以上に謝ってきたので卓樹は止めた。
「うわっ、いいですよお兄さん、そんな謝らなくて」
「お兄さん? イールは女だぞ?」
 ルベーに予想外なことを伝えられて卓樹はショックを受ける。
「…………………お兄さん……?」
 改めてイールさんに確認してみたが彼女は構わず返事をしてきた。
「ん?」
「何で否定しないの!?」
「もう……慣れてしまいましたし、いちいち否定するのもどうかと……」
 イールさんはすでに諦めの境地にいる感じで受け入れているようである。
「そこをあえて頑張ろうよ!?」

 男か女かわかりづらい人って初めてだと卓樹は惚けていた。
(女の人で男前ってこういう感じの人をいうのか、兄ちゃんよりカッコイイのに……)
 卓樹は那砂の無言のプレッシャーがある怒りの視線を感じた。
“あっ……怒ってる。兄ちゃんが俺の心の声に気づいて怒ってる”
「那砂……約束だ。金を払ってちょうだい」
「ああ、いいぜ」
「そんな簡単に言っていいの……空間操作で異世界を繋げることは特殊階級の私だから許されるのよ。高貴な私の崇高な技に見合う報酬をいただくわ」

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