「ルベー」
那砂がルベーのことを呼ぶ。
「なんだ? 一円もまけてやらんぞ」
「美味しいご飯を作ってくれたらもう五十円あげる」
「本当か!?」
「太っ腹――!」
ルベーが触ったのは腹ではない。
「そこは胸だ」
卓樹はルベーとイールさんを見ていて不安に感じる旨を那砂に話した。
「大丈夫? 食べ物作らせて」
「心配なら見張ればいいんじゃないか?」
「……ルベーはお金に困ってるの?」
「全然。父親がだいぶ稼いでいるらしいが、自分が稼いだお金で父親にプレゼントを買いたいらしいぞ」
卓樹が台所に様子を見に行くと、イールさんが料理の材料を用意しているところで、ルベーが暇をもてあましている感じだ。
「タクじゃない、ヒマ? ヒマよね? 遊んでさしあげてもいいわよ?」
構ってほしそうにルベーが卓樹に寄ってくる。だが手伝いに来たのだと言って断った。台所に行くと、洗いものが多すぎて汚れがひどかったはずの流しがキレイになっていたのできっと驚きの表情もすごいことになっていたであろう。
「劇的―――っ!!!!」
「え〜と……言わせてもらうと魔法使ったのゴミ捨てだけよ」
あまりの変わりように卓樹は確認せずにいられなくなる。
「まぶしーっ、魔法を使わずにこんなキレイになるの?」
「たやすい!イールは代代私の屋敷に仕える由緒ある血統だ。家事全般こなすぞ」
イールさんの万能さに卓樹はうっとりした。
「ああ……いいな。イールさんを執事さんって呼びたい」
「構いませんよ」
「かまおうよ、女としてさ」
卓樹がそういった理由は彼の中では執事=年季の入った男性だからである。