俺の母さんも女の子にしか見えないマツばあを祖母として受け入れているようである。
「まーまー、とりあえずお昼にしましょう〜〜」
「おー、すまんのぅ」
「……っ」
まだ信じきれず、俺は言葉が出なかった。
「今日のお昼はラーメンですよ」
「わー♪」
(あの子がマツばあ!? 嘘だろ……っ!!)
ラーメンの美味しそうな匂いを嗅いでいる女の子に聖一の母親がコショーを入れてあげている。俺はどうしてもマツばあだとは思えない。
(こんな萌え幼女なんだぞ!?老婆の要素なんて一つも……)
コショーを近くで入れていたので粉末が空気に漂って、女の子はムズムズしてクシャミが出てしまったみたいだ。
「ふぇっきし!!」
「あ……コショーでしたか? すいません」
女の子がクシャミをすると、女の子の口の中にあった入れ歯が聖一目がけて飛んできたので顔にヒットする。俺は予期せぬ形で『あったぁ』と実感させられた。
俺はマツばあの子どもにしか見えない姿にまさかの展開を考え出していた。
(これってまさか若返っていっているのか?…って事は…)
「うっひゃーふゅみゃんふぁっふぁのー」
マツばあが口をもごもごさせながら悪かったのーという表情をしていた。それもふまえて『すまんかったのー』と言っていたのがわかる。
(これから年を重ねたら……)
五年後は赤ちゃんになって(=赤子化)俺が育てているだろうなとか、十年後は胎児化してどう扱っていいのかわからなくなるんだろうなと勝手な想像をしたせいか悲しさがつのってきた。
「時間よ、止まれ――っ残念すぎるわあ゙あ゙あ゛」
「!?」
俺が思い込みで涙まで少し流して叫ぶと、松ばあはラーメンの麺をノドにつまらせてしまった。